【お彼岸】
 お彼岸とは、春分と秋分の日を挟んで、前後3日の7日間のことです。そのため、春と秋に年2回あります。春分の日は、3/2021日のどちらかで、秋分の日は、9/2223日のどちらかです。彼岸の入りは、17日頃で、彼岸の明けは、23日頃とされています。春分の日と秋分の日は、共に国民の祝日です。春分の日が「自然を讃え、生物を慈しむ日」で、秋分の日が「先祖を敬い、亡くなった人をしのぶ日」とされています。

 日本人は、もともと水田稲作を営む農耕民族だったので、春は豊作を祈り、秋には、収穫に感謝していました。春、秋分の日をお彼岸としたのは、その農作業が一区切りし、比較的時間に余裕がある時期だからです。また、日本には、もともと日願信仰「ひがん」という太陽信仰がありました。お彼岸は、その日願信仰と仏教が融合したものです。


【仏教】
 お彼岸は、仏教の到彼岸「とうひがん」という言葉に由来しています。彼岸とは、向こう岸という意味です。それに対して、こちら側の岸を「此岸」と言います。彼岸とは、仏が住む浄土のことです。そのため、悟りの世界という意味もありました。それに対して、此岸は、煩悩「欲望」にまみれたこの世のことです。ちなみに彼岸と此岸の間には、三途の川が流れています。お彼岸の語源は、サンスクリット語の「パラミータ」です。パラミータには「完成する」「成熟する」という意味があります。それは、悟りの境地のことです。漢字では、波羅蜜多「はらみた」と書きます。日本の仏教は、大乗仏教です。その大乗仏教には、六波羅密「ろくはらみつ」という修行があります。お彼岸は、その六波羅蜜の教えを学ぶための、大事な行事でもありました。


【ご先祖】
 お彼岸は、ご先祖様と会うための行事です。お墓参りや、仏壇の掃除は、ご先祖様を供養するためだとされています。そのご先祖様と出会う場所がお墓でした。彼岸は、たんにあの世という意味でも使われます。日本では、昼が、生きている人の世界で、夜は、死者の世界だとされていました。春分、秋分の日は、ちょうど昼と夜の長さが、ほぼ同じになります。そのため、この世とあの世が、最も近づく日とされました。その時期をお彼岸としたのは、そのためです。

 日本では、ご先祖は、此岸に現れるものとされています。お彼岸は、そのご先祖と交流するための行事です。ちなみにお彼岸という行事は、インドや中国にはありません。日本に仏教が伝わる以前からあった土着の信仰です。お彼岸は、日本古来の先祖崇拝の名残りだとされています。そもそも先祖崇拝は、シャカの思想ではありません。仏教には、あの世にとどまるという発想がないからです。

【おはぎ】
 お彼岸といば「おはぎ」や「ぼたもち」です。一般的に、スーパーでは、おはぎという名称で売られてます。どちらも、基本的には同じものです。ただし、季節によって呼び方が変わります。おはぎの材料は、餅米「うるち米」とあんこ「小豆」です。小豆の赤は、邪気を払うとされていました。そのため、おはぎは、もともと厄除けの行事食だったとされています。

 春に作るのが、牡丹餅「ぼたもち」です。ぼたもちのあんこには、こしあんを使います。こしあんにするのは、春には、小豆が固くなっているからです。秋に作る「おはぎ」には「つぶあん」が使われます。秋は、ちょうど小豆の収穫期です。そのため、おはぎには、新鮮な小豆が使われています。おはぎは、表面の小豆が、萩の花に似てることから「萩の餅」とも呼ばれました。