【六道輪廻】

 六道輪廻とは「6趣」や「6界」とも呼ばれる6種類の世界のことです。その世界の中で、衆生は、何度も生まれ変わっているとされています。衆生とは、一切の生きとし生けるもののことです。仏教において、衆生は、その行いの結果として、6つの世界のどこかに転生するとされています。輪廻とは、無限に繰り返すという意味です。それは、車輪の回転のように、ぐるぐると回り、生死を繰り返すとされています。六道輪廻は、死後に生まれ変わる世界ではありません。生まれ変わった世界が、永遠に続くわけではないからです。前の世界での行いによって、どの世界に行くかは決まります。それを裁きによって、決めるのが閻魔大王です。

【六道輪廻図】
 六道輪廻を分かりやすく、絵で表現したものが六道輪廻図です。図の内側の円には、六道輪廻が、外側の円には、輪廻の原因だとされる12縁起が描かれています。円の中心にあるのが、貪「欲望」瞋「怒り」痴「愚かさ」の三毒です。円の外にいる怪物は、無常の象徴だとされています。無常とは、世界が、一つの状態を保てず、常に移り変わっていることです。

 六道輪廻は「三善道」と「三悪道」に分かれます。三善道が「天」「人間」「阿修羅」で、三悪道が「畜生」「地獄」「餓鬼」です。ただし、修羅道を含めて四悪道とする説もあります。六つの世界は、現実的に存在するかどうかは分かりません。そのため、六道輪廻は、その人の心の状態だとする説もあるようです。


【現実】
 今いる現実の世界にあるのが「人間」と「畜生」です。人間と畜生は、欲界に属しています。欲界とは、肉欲が支配する世界のことです。人間界は、生老病死などの苦しみがある一方で、楽しいこともある世界です。その中で、5戒を守れば、再び人間に生まれ変われるとされています。六道の中で、仏教を学ぶことが出来るのが人間界です。仏教を理解すれば、解脱をすることが出来るとされています。解脱した者は、再び輪廻転生をしません。シャカは、その六道輪廻からの解脱を目指しました。

 畜生とは「鳥」「獣」「虫」などの動物の世界です。そこでは、弱肉強食が繰り返され、お互いに殺生しあうとされています。畜生は、他人の幸せを妬んだり、不幸を喜ぶ者が行く世界です。


【天上界】
 天とは「天部」「天衆」「天人」などと呼ばれる神々が住む世界です。その神々は、元々インドの神で、サンスクリット語では「ディーヴァ」と言います。仏教では、仏法の守護神とされました。天は、苦が少なく、享楽が多い世界です。ただし、神にも寿命があります。天は、いわゆる極楽浄土ではありません。極楽浄土は、阿弥陀如来が開いた悟りの世界だからです。そこに入った者は、もはや輪廻転生をしないとされています。


 阿修羅は、サンスクリット語のアスラの音訳です。もともとは、正義を司る天界の神でしたが、好戦的で、欲望を抑えることが出来きなかったので、終始戦う鬼神とされました。阿修羅も仏法の守護神とされています。阿修羅道は、自惚れや、猜疑心の強い者が行く世界です。

【死後】
 一般的に、死後に行くとされるが「餓鬼」と「地獄」という世界です。餓鬼とは、死後の儀礼を行わなかったため、祖霊になれず、中途半端な状態にある霊魂のことです。中国では、霊魂のことを鬼と言います。餓鬼道は、嫉妬深い人や、欲深くケチな人が行く世界です。餓鬼は、何かを食べようとしても、口に入れる前に、青い炎で燃え尽きてしまいます。そのため、常に飢えと渇きに苦しんでいました。餓鬼は、最終的に骨と皮だけになり、腹だけが腫れた体つきになります。

 地獄は、苦しみが最も多い世界です。罪を償うために、その罪状ごとに、さまざまな罰を受けます。地獄は、次に転生するまでの時間が長いことが特徴です。