【自然神】

 神道の神は、もともと自然の象徴で、後に先祖の霊という意味も加わったとされています。「神」という字は、もともと「示」と「申」組み合わせでした。「示」は、現在では「礻」と表記されています。礻「しめすへん」は、祖先を祀る祭壇のことです。「申」とは、稲妻のことで、もともとは申だけで、神という意味でした。「神」とは、稲妻のように恐ろしい自然現象のことで、本来は、天空にいる雷神のことだったとされています。神道の神は、アニミズム的でした。アニミズムとは、森羅万象、全てのものに魂が宿っているという考え方です。山や川などの自然は、神の現れであり、御神体だとされています。御神体として、有名なのが「富士山」や「那智の滝」です。


【先祖の霊】

 神には、もともと祖先の霊という、意味合いはなかったとされています。後に、先祖の霊も神として祀られるようになりました。神は、隠身であり、目には見えないものとされています。または、見てはならない神聖なものでした。神道では、有力だった人物が、死後、神として祀られることがあります。恨みを残して亡くなった人物も、祟りを避けるため、神として祀られました。例えば、天神様と呼ばれる菅原道真などです。和気清麻呂は、道鏡から天皇家を守ったので「護国神」とされました。護国神とは、国を守るために死んで神となった者のことです。日本が、中央集権化する過程で、神社ごとの社格という階級制度が出来ました。神の方にも、神階「しんい」と言う順位づけがあります。


【氏神】

 一族の守り神を氏神「うじがみ」と言います。氏神とは、その一族が祖先神として、共同で祀る神のことです。例えば、中臣氏は「天児屋命」や「武甕槌」を氏神としています。もともと同じ血縁的集団は、同じ神を信仰していました。その者同士を「氏子」と言います。氏子は、周辺の一定地域に居住していました。「お宮参り」や「七五三」などのお祭りは、本来、氏神に感謝する行事だったとさています。氏神と似た意味で使われるのが「鎮守神」と「産土神」です。時代の変化ともに、その意味が変わったとされています。氏神、鎮守神、産土神の区別がなくなり、ほぼ意味で使われるようになりました。鎮守神と産土神の区別がつかなくなったのは、江戸時代です。明治の氏子制度では、氏神とも同一視され、混同して使われるようになりました。


【鎮守神と産土神】

 土地を鎮め守ってくれる神を鎮守神「ちんじゅかみ」と言います。鎮守神「ちんじゅかみ」は、地縁を基に成立した神で、その土地の住人や建造物を守護しました。神社を囲むように存在している森のことを「鎮守の森」と言います。鎮守の森は、信仰の対象として聖域とされました。聖域として、保護されたので、津波などの災害から人々を守る防災林となったとされています。産土神「うぶすなかみ」は、その土地に生まれた者を一生守護するとされ、子供たちを守り育て、その運命を司りました。生涯を通じて同じ土地に住むことが多かった時代、鎮守神と産土神が同じであることが多かったとされています。