残念ながら銀メダルに終わってしまった78kg超級のS本選手ですが、
その女子78kg超級で私が一番感動したのが3位決定戦でした。
地元イギリスの33歳のベテラン、ブライアント選手が銅メダルを獲得。
一時は引退も考えた彼女が地元でやっと掴んだ悲願のメダル。
本当に良かったです![]()
「やっぱり、もう無理なのかな・・・」
スポーツの世界でなくとも、人生でもそういう気持ちになる事はあります。
迷いがなく突っ走っているように見えても、
内面では何度も諦めかけたりもするし、
「もう・・・やっぱりダメかもしれない」という声を振り払いながら、
限界なんてとっくに通り過ぎてちぎれそうになっているのに、
それでも大切なものから手を放さずに頑張ったりしているものです。
「こんなことをしていて、一体何の意味があるのか?」
時に自分も、自分の夢も見失いそうになりながら、
耐えきれずに放した手から遠ざかりかけたものを、
慌てて追いかけて再び握り直すこともあったかもしれません。
彼女もそういう眠れない夜をいくつも越えてきたことでしょう。
人はスポーツに人生を重ねるからこそ、
これほどにスポーツを愛し感動するのだと思います。
人生に生きざまを求めるように、
選手の闘い方や姿勢を問うのだと思います。
3位決定戦は21歳のウクライナの選手と。
技ありでリードされながら、技ありを取り返して並びます。
そして最後は相手の大外刈りを返して技ありを取り合わせ一本勝ち!
諦めずに執念で勝利を手にしたブライアント選手も素晴らしいですが、
返されるのを恐れずに思い切り大外刈りに行った彼女も素晴らしかった!
二人の魂の美しさを見せつけられた試合でした。
本当に柔道を、そして人生を愛している人達でなければ、
「何のため」に柔道をやり、
「何のため」に生きているのかを自らに真に問う人達でなければ、
試合が決まった瞬間の二人。
敗北を全身で受け止め倒れ込む敗者と、
うずくまって勝利を噛みしめる勝者。
どちらも全力を出し切った美しい姿でした![]()
敗れて号泣する敗者。
でも、最後に彼女が思い切りかけたあの大外刈りの意味と重みは、
柔道をやった事がある人なら痛いほどわかるはず。
それは苦労人のブライアントもちゃんと分かっていて、
敗者を尊重し配慮することを忘れません。
最後の礼が終わるまでは、
決して喜びを爆発させることはありませんでした。
イギリスの柔道選手ということで、
私が以前大変お世話になったマーゴーさんという、
イギリス人の女性柔道家を思い出しました。
私より少なくとも10歳以上(もっとかも?)は年上の女性でした。
私がまだそこの道場に行き始めの白帯だった頃、
マーゴーさんは私の稽古をよくじっと見ていました。
「何なのかな~?」と不思議に思っていたのですが、
ある日、稽古が終わった時に私に近づいてくると、
「もし良かったらこれから稽古の前に少し早く来て、
私と寝技の練習をしない?
あなたのはまだパワーだけだから、
私が寝技を教えてあげられると思うの。
あなたはガッツがあるから、教えたい!」
と誘ってくれたのです。
とにかく強くなりたかった私は、もちろん即OKしました。
それからよく二人で待ち合わせては、
まだ誰も来ていない照明もつけない道場で、
稽古が始まる前の1~2時間を寝技の練習に当てました。
マーゴーさんはとても寝技が強い人だったので、
最初の頃はそれこそボコボコにされましたね。
「勝ちたい!」という気持ちと力だけが強い私は、
寝技でもとにかく気迫やパワーで攻めがちでした。
そんな「勝ちたい」という気持ちばかりが先走る私に、
きちんとした寝技の技術を辛抱強く身につける事を教えてくれたのが、
このマーゴーさんでした。
子供っぽい私は、教えてもらってるのに負けるのが悔しくて、
喧嘩腰になったり、泣きなが向かっていったりしましたし、
「もうヤダ!」と負けてぶんむくれてしまった事もありました
マーゴーさんも大変だったと思います。
「ノリコ、これは練習なのよ!?」
「練習でも負けたくない」
「・・・
技術を覚えないとダメよ。反復練習しなさい」
「・・・・・」
そんな私をなだめながら(笑)、
根気よく寝技の基本を叩きこんでくれました。
感謝しています。
彼女はだいぶ前にガンのため母国のイギリスで亡くなっています。
柔道が好きで、犬や猫が大好きで、
不器用な真っすぐさを持った女性でした。
私以上に好き嫌いのはっきりした女性で、
柔道や人生についても情熱を持った熱い人でした。
時に周囲とぶつかる事もありました。
彼女との寝技の特訓、ロッカールームでの熱いトークを、
懐かしく思い出します。
マーゴーさんが生きていたら、
どんなにか母国イギリスでの五輪柔道を楽しんだことでしょう。
いえ、マーゴーさんの魂はきっと、
あの会場のどこかから大会を見守っていたと私は思います。
いえ、もしかしたら生まれ変わったマーゴーさんは、
もう柔道をやっているかもしれないなとも思ったら、
何だか嬉しい気持ちになってクスっと笑ってしまいました。
彼女だったら、絶対に生まれ変わっても柔道やってるから。
彼女は本当に柔道を愛し、情熱を持っていました![]()
そんなマーゴーさんが、私はとても好きで尊敬していましたよ。
私が柔道や格闘技に費やした20代後半から40歳直前までは、
人から見たら子供も産まないで馬鹿げたことをとしか思われないでしょう。
でも、あの時間は誰が何と言おうと、
私の人生にとってはどうしても必要な時間でした。
それは自分だけにしか分からないことです。
あの頃共に一心不乱に稽古に打ち込んだ仲間と流した汗は、
ふざけ合ったり馬鹿笑いした思い出は、私の人生の宝です







