モーツァルトのフルート協奏曲第2番は、とにかく華やか。この作曲者の作風自体が華やかだけに、もともとのオーボエ版や、より落ち着いた第1番のほうが好きかなと思うこともありますが、それでも、この心躍る華やかさは魅力的で、捨てがたいものがあります。

 

この曲で私が重視したいのは、やはりフルートの華やかさと軽やかさ。個人的には、スピード感が落ちると野暮ったい印象を受けて受けてしまうので、余裕しゃくしゃくと吹くことのできるテクニックの高さも必要なのかなと思っています。加えて、オーケストラには前奏で一気に引き込むことのできる魅力ある音色を望みたいです。

 

この観点から私が好んで良く聴く演奏は、新旧のニコレの録音です。

 

新盤のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団との録音は、前奏のオケの柔らかい響きからもう最高。ニコレのソロも最初の華麗な駆け上がりから実に魅力的で、素敵な音色のオケに乗り、縦横無尽に駆けまわります。どの部分もとても軽やかで、音色も飛び切り明るく、聴いていて実に気持ちが良いです。カデンツァも長すぎず単なる技巧の見せびらかしにならず適切。素晴らしいです。

 

第2楽章は伸びやかなソロと落ち着いたオケとの掛け合いが素敵。ジンマンの指揮はソリストに合わせるのが実に上手です。やや退屈になりがちなこの作曲者の緩徐楽章が、理想的ともいえるこのコンビにより、実に興味深く聴くことができます。

 

終楽章はとてもスピード感のある演奏。オケもとても生き生きとしていて、様々なキャラクターを適切に演じることができるレベルの高さを実感します。ソロも実に冴えていて、実に若々しい。既に満足感の高い演奏を最後まで楽しませてくれます。聴いて良かったと思える名演奏です。

 

一方、ミュンヘン・バッハ管弦楽団との旧録音は、一見異質な組み合わわせに感じますが、こちらも魅力的な演奏です。

 

バッハのイメージが強いこのオーケストラ。前奏からがっしりとしています。それでも、音色は明るく、ミスマッチな感じはしません。また、メロディーの裏で動いているヴィオラ等、細部まで丁寧に彫刻されていて、指揮者カール・リヒターの職人芸が感じられます。

 

ニコレのソロは音色こそ華やかですが、新盤のような縦横無尽さはそれほど感じられず、むしろ気心知れた仲間たちとのアンサンブルを楽しんでいるといったようなオケと一体感のある演奏で、聴いていてとても心地良いです。落ち着いていて心躍るような爽快さはないかもしれませんが、逆に、この曲の華美な点に苦手意識を持っている方には特におすすめできる演奏かもしれません。カデンツァは新盤とは別物。個人的にはやや長く感じます。

 

第2楽章はニコレの輝かしい音を堪能できる演奏。真っすぐな音はこの演奏家の大きな魅力かもしれません。カデンツァは短いものの、この良さが全面に出ていて、素敵です。一方、録音のせいもあるかもしれませんが、オケはやや重たく、そしてガサついた印象を受けます。

 

終楽章も華やかながら落ち着きが感じられる演奏。それでも、ソロは新盤以上にテクニックにキレがあり、若さが感じられ、決してこの曲の魅力が失われていません。カデンツァはこちらのほうが好き。テクニックの高さを見せつけながらも、嫌味がありません。センスの良さを感じます。

どちらを選ぶとすればすれば新盤のほうですが、この演奏も劣らず素晴らしいと思います。

 

このコンビのバッハより好きかも