今日のNHK交響楽団の演奏会は、NHKホールよりも音響の良い東京芸術劇場で定期公演のBプログラムと同じ曲目を聴くことができるということで、個人的に楽しみにしていた演奏会でした。

 

その期待をはるかに上回った演奏で、特に後半のチャイコフスキーの交響曲第1番が圧倒的に素晴らしかったと思います。

 

特に印象的だったのが第2楽章で、透明感のある弦楽器の神秘的な出だしに始まり、オーボエとフルートの素敵な掛け合いや、温かみのチェロの歌に勇壮なホルンといった、聴かせどころをしっかりと表現できていただけでなく、ややもすると流れを損なうような経過的な部分も、次は何が始まるのだろうとゾクゾクさせるような雰囲気があり、大変面白く聴くことができました。

 

第3楽章終盤に現れる面白い仕掛けを処理のうまさや、フーガの処理の丁寧さといった、祝祭的な雰囲気と勢いで押し通すことなくじっくりと聴かせた終楽章の大人な表現等、後年の交響曲と比べると印象的な旋律が長く続かずやや散漫な印象のあるこの曲を最後まで楽しませてくれる演奏でした。

 

前半の2曲も良かったです。「スペイン奇想曲」は、クラリネットとヴァイオリンのソロは残念ながらあまり冴えない出来であったものの、リズムにしっかりと乗った心が躍るような演奏で、特に、鮮やかなトランペットから始まった第4楽章は、各楽器の妙技を堪能することができ、ワクワクしながら聴いていました。勢いを落とさず流れ込んだ終楽章の速めのテンポ感も心地よく、ラストの追い込みは心を熱くさせるものがありました。

 

ダニエル・ハリトーノフをソリストに迎えたリストのピアノ協奏曲第1番は、ピアノはパワーや華麗なテクニックを存分に見せつけただけでなく、歌う部分は雰囲気をガラッと変え、また、オケとの掛け合いを楽しみながらも演奏することができる余裕も持ち合わせており、積極的な演奏を聴かせたオケの演奏の良さもあり、聴きごたえのある演奏でした。

雰囲気の変え方がやや強引で、流れが損われていると感じる部分や、ペダルを少し使いすぎかなと思う部分もありましたが、とても潜在能力の高いピアニストだと思いました。

 

どの楽器も実力があり、また、指揮者のパブロ・エラス・カサドとも相性が良かったのか、どの曲も音楽が生き生きとしていて、聴いていて楽しかったです。またこのコンビで聴きたいと思わせるような素晴らしい演奏会でした。

 

後年のスタジオ録音よりもおすすめです。