ここ数年、毎年のようにショスタコーヴィチを取り上げているインバルと東京都交響楽団とのコンビ。今日の定期演奏会は、前半にヴァイオリン協奏曲第1番、そして後半に交響曲第12番「1917年」と、両方ともショスタコーヴィチの作品が演奏されました。

 

聴きごたえがあったのは後半のほうです。個人的に期待していた、数年前の交響曲第8番で聴かせたようなギリギリまで追い込むような演奏ではありませんでしたが、どっしりとしたテンポで堂々とした演奏を展開しており、オケ全体で厚みのあるサウンドが形成されていたので、金管が少しくらいミスをしても全体に影響しない安定感がありました。

 

また、第1楽章の革命歌を紡いでいく部分の伸びやかさや、第2楽章の緊張感のあるソロ、そして、終楽章のどこか現実感のないふわふわとした喜びと戦いの回想の描き分けといった、この曲を聴かせる上で重要だと思われる表現もしっかりとしていました。

 

欲を言えば、例えば第2楽章の後半や第3楽章の進撃の前のように、少しずつ雰囲気が変わっていく細かい感情表現も聴きとれるようになってくれると最高ですが、安心して聴くことができました。

 

一方、前半はオケ、ソロともに今一つの出来。ソリストのシュパチェクのヴァイオリンは音程の取り方がぎこちなく滑らかさに欠けるので、特に厚い雲で覆われたような第1楽章はブツブツと切れて聴こえて雰囲気を大いに損なっていました。

また、一生懸命弾いていたのは伝わってきましたが、曲に深く入り込んでいくようなタイプでもないので、第3楽章の長大なカデンツァは正直退屈してしましました。明るめの音色で華麗に聴かせたアンコールを聴く限り、この曲に合っていないような気がします。

 

オケは線が細く、ダイナミクスも狭いソロに合わせるためか、音量を抑えめにしているように聴こえましたが、音量を落とすことでこの曲が持つ途方もなく暗い雰囲気まで削がれており、特に、不自然なほど軽薄に聴こえた低弦には、違和感を強く覚えました。

 

交響曲はやはりこの盤が最高だと思います。

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ヴァイオリン協奏曲第1番の名盤

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