今や、多くのコンサートで取り上げられるようになったショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番。物思いに耽るような第1楽章や、諧謔的な偶数楽章、そして、美しい旋律と緊張感のあるカデンツァが大変印象的な第3楽章で構成され、この作曲家の魅力を堪能できるだけでなく、演奏効果も高く聴きごたえのある曲なので、よく取り上げられるのもうなづけます。

 

個人的に、この曲に親しむうえで外せないと思うのが、初演の組み合わせでもあるオイストラフとムラヴィンスキーとの録音です。この演奏を一言で表現すれば、どこまでも曲に深く入り込んでいくような演奏です。

 

二度とこの夜が明けないのではないかと不安に陥るかのような深い闇に包まれた第1楽章。諧謔的でありながらも、オーケストラが本気で怒るような爆発を見せ、恐怖が持続していることを実感させる第2楽章。ソロ、オケ(レニングラード・フィル)が一体となって切実な祈りの音楽を奏で、強い感動を呼び起こす第3楽章。そして、半ばやけになったかのようにおどけてみせる終楽章。

正直、一度聴くと疲れてしまうような演奏ではありますが、この曲が持つメッセージを表現しきったかのような素晴らしい演奏です。

 

最近の録音では、ヒラリー・ハーンのものがなかなか良いと思います。オイストラフの演奏と比べ、旋律の美しさを端的に表現した客観的な演奏でありながらも、この曲の持つ漆黒の闇にいるよな雰囲気は損なわれておらず、聴きやすい演奏でありながらも多くの演奏で感じるような物足りなさを感じることはあまりありません。張り詰めたような空気が流れるカデンツァは特に素晴らしいです。

第2楽章が少し軽く、節回しが気になる部分はありますが、シャープに切り込んでいく演奏なのでそれほど気になりません。

 

ヤノフスキとオスロフィルのバックは、もう少しサウンドの厚みが欲しいと思う部分もありますが、奇数楽章の丁寧な表現やスピード感のある第2楽章といった、この曲に対する共感が伝わってくる演奏なので、好感が持てます。

 

この盤が聴きやすくておすすめです。

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聴いたコンサート

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