柴田先生でお馴染みの赤と黒だが、この公演はフレンチロック版。とにかく圧巻の歌歌歌!フレンチロックらしく歌で心情を語り、継いでいく新しい「赤と黒」楽しみました。

星組の精鋭が集結したすばらしい舞台でした。

従来のジュリアン・ソレル像は人を踏み台にする野心家というイメージでしたが、礼真琴さん演じるフレンチロック版のジュリアンは、自分の努力と才覚で人生を切り開いていく人。出自から成り上がり扱いされる不条理の中、ただ自分の気持ちに忠実に、かつ自分の誇りと尊厳のために行動する人という感じでした。レナール夫人(有沙瞳さん)は、貞淑で信心深い人妻でありながら、ジュリアンへの気持ちを抑えることができない。ヴァルノ(ひろ香祐さん)は半ば脅しをかけるようにレナール夫人に迫るが、レナール夫人に激しく拒絶される。ヴァルノはジュリアンに心を寄せる使用人のエリザ(瑠璃花夏さん)を使い、レナール夫人の不貞を告発する。ひろ香さん礼さんの同期として礼さんを支えるポジションにいらっしゃる感があるが、この舞台でも存在感がありました。瑠璃さんも恋する可愛らしさから嫉妬の感情への移り変わりを上手に表現しておられた。レナール夫人が保身のために発したジュリアンを激しく罵る言葉は、誠実な夫レナール(紫門ゆりやさん)への贖罪とともにジュリアンを安全な場所に逃すためにそれ以外の選択はないと咄嗟の判断だったと思うが、プライドを傷つけられたことはジュリアンにとっては最悪の痛手だったに違いない。


2幕、新たに仕える大貴族ラ・モール伯爵(英真なおきさん)の娘マチルダ(詩ちずるさん)と激しい恋に落ちる。マチルダとの恋の駆け引きの際も、出自のコンプレックスから疑心暗鬼に陥りながらも、マチルダの心を掴んでいく。ラ・モール伯爵はマチルダのために二人が結婚できるようにジュリアンの出自に貴族の落胤であると上書きする。順調にいきかけたところでまたもヴァルノ夫妻。レナール夫人を追い込み、ジュリアンの素行をことさら悪しざまに誇張した告発書にサインさせる。


またもプライドをズタズタにされたジュリアンはレナール夫人を銃撃する。


最終的にはレナール夫人が運命の女性だったと悟ったジュリアン。罪を受け入れ処刑される。


ナポレオン後もまだまだ身分差が幅を利かせていた時代なのですね。