百鬼夜行、陰陽師、呪術など、超常現象のまやかしに畏怖を抱いていた平安時代。あの時代にしては科学的に説明がつかないものは信じない主人公菅原道真と道真の知見を高く評価して、無理やり仲間に引き込もうとする在原業平。二人が平安時代の怪事件を解決していく物語はなかなか興味深い。

道真(月城かなとさん)、自分よりも年長であろう業平(鳳月杏さん)にも一切物怖じすることなく、鋭い洞察力を発揮しながら意見していく。今回は恋愛対象のヒロインではない照姫(海乃美月さん)とのやり取りもトップコンビとしてはあまりない関係性でこれもまた新鮮でした。トップ娘役に「坊ちゃん」と呼ばれるのも面白かったです。世の中の不条理を知り尽くした業平と、知識と理想を追求するあまり妥協を許さない道真が決裂してしまう。照姫に世間知らずと諭されたが、聞く耳をもたないツンデレなお芝居も月城さんはうまくこなしておられた。最後は共に良い着地点を見つけ大円団とまでは行かないまでもベターな決着だと思いました。

そのほか

今回の悪役藤原基経役の風間柚乃さん。まさしく芝居巧者。冷徹な政治家を見事に演じておられた。

幼い清和帝役の千海華蘭さん、鳳月さんと同期ながら、幼い帝を違和感なく演じておられたのはさすが。

菅原家の女房(この時代は出仕している女性を指す)役の白梅役の彩みちるさん。まだまだ少女役も大丈夫。この方もとてもお芝居がお上手です。

藤原高子役天紫珠李さん、次のトップ娘役と発表になりましたね。業平と以前恋仲にありながら引き裂かれ実兄の基経の政争の具にされる悲哀を出しながらも兄への憎しみを募らせていく役柄を見事に演じておられた。

藤原常行役礼華はるさん妹の多美子の毒殺を防ぐために自ら基経が仕掛けたであろう毒入りの酒をあおる。一途な妹愛、こういう役もお似合いです。

藤原多美子役花妃舞音さん、屈託のない笑顔で帝に入内する幼い姫君の役がぴったりでした。華がある役者さんですね。

 

楽しい演目でした。