3月Skystageで視聴した作品

阿弖流為 -ATERUI-'17年星組視聴

礼真琴さん、有沙瞳さん、瀬央ゆりあさん出演。8世紀、大和朝廷は支配領域を東北に広げるため、蝦夷征伐(征伐というよりも今なら侵略でしょうね。)に乗り出す。同じ蝦夷の民を守るという大義を持ちあえて朝廷側に与した,壱城あずささん演じる鮮麻呂、妻を目の前で理不尽な理由で殺害されても何もできずに時期を待った。蜂起した後も阿弖流為たちが力を蓄える時間稼ぎのために、一人で責めを負った。見世物のような牢で石を投げられながら、蝦夷の子供、阿弖流為、有沙さん演じる佳奈が窮地に陥っているところに出くわす。衆人の関心を自分に集めるため自ら舌を噛み切り三人を救ったその場面は涙なしには見ることができなかった。

その後阿弖流為と瀬央さん演じる坂上田村麻呂の出会いのシーン。鮮麻呂を人間として丁寧に弔いそれに対して礼をいう阿弖流為。二人の人間としての器の違いを見せつけられた。この時代にこのように人間としての尊厳を心得ているということ自体が稀だろうが、その技量の大きさが今の世にも名を遺す名将たるゆえんだろう。佳奈と阿弖流為が思いを交わすシーン、大きく抱き上げる仕草に阿弖流為の包容力、男っぽさがよく表現されていた。少年っぽい風貌で可愛らしい娘役すらこなす礼真琴の新しい一面を見たような気がする。

坂上田村麻呂が討伐軍を率いることになった後、蝦夷の若者たちや仲間たちを守るために阿弖流為と綾鳳華さん演じる軍師母礼が降伏する。田村麻呂は二人の助命を試みるが、万里柚美組長(当時)のまさかの男役桓武天皇はそれを許さなかった。天華えまさん演じる飛良手、最初は自分の信念から蝦夷を出奔しようとするが、阿弖流為に命を助けられ終生阿弖流為を補佐して阿弖流為の最期を見届けた後、生かそうとする田村麻呂を諭し、殉死する役を見事に演じた。

阿弖流為と母礼の首塚は現在は京阪電鉄の牧野駅の近くあるようだ。(学生時代京阪電鉄で通っていたのでおなじみの駅だ。)手厚く葬ることのみが唯一田村麻呂にできることだったのだろう。枚方のほかに田村麻呂ゆかりの清水寺にも阿弖流為の碑があるようだ。こうやって京都(当時の都)にも阿弖流為を祀る碑があるのはなにか陰陽的なものもあるのだろうか。(→真偽はなにもわからない)


最後田村麻呂が東北の佳奈、彼女と阿弖流為の息子を訪ねる。佳奈が「阿弖流為帰ってきたのね」と叫ぶ場面感動的だった。ほんの30人ほどのこの舞台感動も多く見どころ満点だった。。



1994年雪組ブルボンの封印・コートダジュール
一路真輝さんお披露目紫ともさんの退団公演

ブルボンの封印では一路さんはルイ14世とジェームズの二役。鉄仮面伝説を藤本ひとみさんが独自視点で描きだした傑作。だが脚本的には退団する紫さん(マノン役)へのリスペクトが全くなかったので見ていてだんだん辛くなってくる。終始花總まりさん演じるマリエールに嫉妬。挙句の果てに無理心中を図って、自分の毒で死んでいくというとても娘役トップが演じる役ではないと感じてしまった。原作では花總さん演じるマリエールが明らかに「王道」「鉄板」ヒロイン。とってつけたように最後ジェームズが「なぜ自分を信じてくれなかったのだ」と死にゆくマノンにつぶやくセリフがあったが、それも空しかった。
 
コート・ダジュールは当時歌唱力のあるメンバーが多かった雪組でセリフが歌で綴られていく珍しいショー。こちらもまた紫さん演じるイヴォンヌは一路さん演じるフィリップが好きなのにフィリップは花總さん演じるマリ―が好きという設定。ショーまでも退団していく紫さんへの配慮がなかったと感じた。

紫ともさんへの思いが強すぎて、こんな感想になったが、劇もショーも演じている方々は、とても素晴らしく、クオリティの高い舞台だった。一路さんをはじめとして、高嶺ふぶきさん轟悠さん香寿たつきさんの華やかさ、歌唱がコスチュームにもマッチしていた。

 

そして花總さん、本当にヒロイン然とした、華のある演技だった。こののち長年宝塚のトップ娘役を務めあげ、宝塚のアイコン的な存在のひとつとなる海外ミュージカル初代エリザベートを演じ、現在もその輝きを失わない稀有な舞台人であることは否めないだろう。

かなり昔の舞台作品だったが、比較的きれいな映像だった。