「保乃ちゃんってさ、顔いいよね」
「どうしたん突然」
私の彼女は時々突飛なことを言い出す。顔がいいから画家に絵を描かせて飾りたいとか、スタイルがいいから彫刻にして後世まで残したいとか。
前に保乃ちゃんの匂いを香水にしたいって言われた時は本気でひいたが、悲しいことに大真面目だった。
「この可愛さ、伝え継ぎたいなぁ」
「で、今日の気分は?絵画?ステンドグラス?」
「ん〜…」
私の顔をぺたぺたと触り、目をじっと見つめられる。
彼女の大きくてくりくりした目は、見つめ続けると引き込まれそうになる。
「網膜に焼きつけたい」
そう言うと小さな唇を近づけて、私の呼吸を奪う。お誘いが上手なのか下手なのかわからんな。
「イチャイチャしたいなら、そう言えばええのに」
「だって…」
「だって?」
「…恥ずかしいじゃん」
あぁもう!可愛すぎる!
ぎゅうっとひぃちゃんを抱きしめると、耳元で可愛いと囁いてみる。すぐに顔が赤くなって、力が抜ける。
耳が弱すぎるのも考えものやな。
「私は可愛いより、かっこいいが欲しい…」
「無理やな。今のところは100対0で可愛いしか無い。」
うーんと唸りながら「かっこいい」を考えてるのがもうかわいすぎる。ひぃちゃんの真似をするなら、この可愛い生き物をぬいぐるみにして永遠に愛で続けたい。
「ねぇ、立って壁に背中つけてみて」
「…保乃、無理やと思う」
「やってみなきゃわかんないじゃん!」
唐突に立たされたけど、絶対壁ドンしたいんだろうなとは思った。結果は…お察しのとおりです。股ドンも無理でした。
「じゃあ、次はひぃちゃんが壁に背中つけて?」
「はーい。付けた。」
試しに私がやってみるとこにした。壁ドンじゃつまらないなぁ…と思い、予定変更で肘ドンとやらをやってみることにした。
「へぁっ!?顔、胸、近っ…美人…」
「なんでそんな中学生男子みたいなリアクションなん?ドキドキせん?」
「いや、してるよ。バクバクしてうるさいぐらい。」
ひぃちゃんの胸に手を当てると、ほんとに鼓動が早かった。付き合ってもう1年近く経つのに慣れへんな、と笑ったら、慣れないよ!とキレられた。
かっこいいチャレンジはそんなこんなで終わりを迎えたようで、ちょっと次回までに考えておくとだけ言った後は、早々に私の胸元に頭を寄せていた。
「もうかっこいい終わりなん?」
「終わり〜。あと思いつかないから」
「じゃあもう甘えんぼさんタイム?」
肯定するのが恥ずかしいのか、頭を擦りつけてくる。そんなところも可愛くてかわいくて仕方ない。可愛いなぁ、と呟くと「ふふっ」と小さな笑い声がした。
どこからか甘い雰囲気が漂って、また唇同士が触れ合う。そんな子犬みたいな目ぇせんでも、ちゃんと満たしたるから。
「大好きだよ、ひぃちゃん」
「保乃ちゃんがかっこいいの、ずるい」
かっこいいもいいけど、私は可愛いひぃちゃんがもっと見たいな。そう思いながら、私は彼女の服の裾に手をかけた。