初めての長編です。暖かい目で見てください。

陰キャ王子とコミュ強お姫様のお話です。





「森田さん、これ保乃ちゃんに渡しといてくれない?」


「ねぇ森田さん。田村さんの幼なじみなんだって?小さい頃の田村さんの話聞いたい!




また"田村さん"かぁ…。私は心の中でぼそっと呟く。

田村保乃、彼女は私の幼馴染で、学校のお姫様的存在の子だ。顔はいいし、スタイルもいいし、バレー部ではエースも務めている。

そこが気に食わないところでもあるけど。




「んで、その保乃に人気を取られるのが嫌なん?"リトル・プリンス"?




私の話を聞いた天は、にやにやしながら聞いてきた。リトル・プリンスとは、私が天や夏鈴、田村以外の誰とも喋れないだけなのに、寡黙でクールな王子様キャラに祀り上げられた私の異名だ。正直悪い気はしないが、どうしても明るい田村と比べられて人気は劣る。




「違うし…というか、田村がなんであんなにちやほやされてるのか私には分からないな


「ほぉ〜ん?あの人徳も最高のプリンセス様に落ち度があると?幼馴染は言うことが違いますなぁ」


「そう言うんじゃなくて…




田村保乃は小さい頃は、ずっと私の後ろをついてくるような子だった。そんな田村が可愛かったのに、ぐんと背が伸びてあっという間に13cm近くも身長差がついた。それに私の後ろに隠れずに、自分でなんでも出来るようになってしまった。




「ふーん、つまり寂しいんや」


「この話のどこをどう聞いたらそうなる!?」


「全部。ひかるの話ってつまり、いっつも一緒やった保乃がおらんなって寂しい〜ってことやろ?」


「ち、違っ…!」

 



別に寂しくない。間違っても、私が田村と一緒に居られなくなって寂しいとか、絶対そんなことはありえない。向こうが寂しがるならまだしも。




「ひかる〜。唸ってるとこ悪いけど、次隣のクラスと合同で体育やで?はよ行かんと置いてく」


「あ、ちょっと待ってよ天!」


私は体育着が入ったバックを引っ掴んで天を追いかけた。




更衣室のドアを開けると、2クラス合同のせいか人でごった返していた。隣のクラスの子からは謎に注目されてしまう。どこからか私の名前やらプリンスやら聞こえてくる。なにもしてないはずなのに私が何か悪いことしたみたいに思えるからこの時間は毎回憂鬱だ。


しかも、隣のクラスが居るということは…

と、辺りを見回してもやつが居ない。直後、柔らかい感覚がダイレクトで後頭部に伝わる。まさか…




「ひぃちゃん〜!今日は朝起きてへんかったけど、遅刻せんかった?昨日も夜更かししてたんやろ」


「わっ、田村!朝は普通に起き…って、頭わしゃわしゃしないでってばぁ!崩れる!」


「田村ちゃうやろ?いつからそんな子になったんや…保乃ちゃん悲しくて泣いちゃう…」




やっぱりいると思った!因縁の相手田村…

いっつも私を子供扱いしてきて、甘やかそうとしてくる。田村曰く放っておけない妹的存在らしいけど、だからといって毎朝起こしに来たり、世話を焼こうとするのはどうかと思う。




「昔は田村が私の後ろついてきてたのに、お姉ちゃん面なのなんか嫌だ!」


「3つくらいの時やろ?小学校入る頃には逆になっとったな。帰り道で友達できない〜ってメソメソしとったひぃちゃん可愛か「やめろー!」




そんなやり取りをしていると、どこからかくすくすと笑い声が聞こえてきた。急に恥ずかしくなってきて、さっさと着替える。


バッグの中の長袖と長ズボン…あれ、無い。ほんとに無い。

今日は結構冷えるし、凍死覚悟かなぁ…と1人遠い目をしていると




「はい、ひぃちゃんバンザイ!」


「は、はいっ!」



言われるままにバンザイの姿勢になると、長袖のジャージを頭から一気に被せられる。いつもSサイズの私にはダブダブで、太ももにかかる大きさのジャージは新鮮だった。




「保乃部活のウィンブレあるから、ひぃちゃん着な?」


「田村の着てると何言われたか分かったもんじゃないけど…一応、ありがとう。」


「ふふっ、ええよ。…にしても、なんかお下がりみたいで可愛いなぁ」


「言うと思ったよ!田村のバカ!巨人!背え高のっぽ!!!」




はっと気づくと、みんなに見られてることを思い出す。私先に行ってるからね!とだけ言って、私は更衣室を後にした。体育館までの道中見られてる気がしたけど、何となく今は嫌な気持ちじゃなかった。


…嫌な気持ちじゃない?なんで?



───



「…あんなにひかるいじめたら可哀想じゃない?」


「そうだそうだ〜!陰キャを虐めるな〜!」




夏鈴ちゃんは、天ちゃんに引っ付かれながら保乃を諭してきた。夏鈴ちゃんはひぃちゃんの数少ない友達の1人で、なんだかんだ隣のクラスのひぃちゃんを気にかけているみたい。




「ふふっ、可愛い子ほどいじめたくなるって言うやん?もう保乃は、ひぃちゃんが可愛くて仕方ないんよ。だからこれは、保乃なりの愛情表現。」


「保乃ってさ、ほんとに愛が歪んでそうで怖い」


「そんなことあらへんよ」




保乃のこれは、なんなんやろう。

小さい頃に抱いていた感情は確かに尊敬とかだった気がするけど、保乃とひぃちゃんの背丈が離れていく度に愛でる気持ちが大きくなっていった。特に寝顔と寝起きで微睡んで保乃を"ほのちゃん"と呼ぶのが可愛くて、最近は起こす前の10分前から眺めてしまう。


今日もそう。保乃のジャージ着たら、絶対可愛いと思ったから着せた。愛情なんて言ったけど、これはエゴな気がする。

…保乃は、ひぃちゃんとどうなりたいんやろうな