週末こちらを観てきました。
原作は未了です。
●あらすじ
北海道で医大に通う田中(三浦春馬)は、ボランティア活動を通じて体が不自由な鹿野(大泉洋)と出会う。鹿野は病院を出てボランティアを募り、両親の助けも借りて一風変わった自立生活をスタートさせる。ある日、新人ボランティアの美咲(高畑充希)に恋をした鹿野は、ラブレターの代筆を田中に頼む。ところが美咲は田中の恋人だった。
●結果(★5=満点)
★★★★△(4.3)
(甘えていい)
●感想
とてもよかったです!
基本的に病を描いたものって苦手で(色々考えすぎてしまう)あまり観ないのですが・・・
この作品はタイトルのインパクトと、予告の画面からポジティブパワーを感じたので、観に行きました。
そしてそのイメージ、当たっていました!
作品全体からビシビシと「生きる」という強い意志を感じ取ることができる。
しかも全く重たくなく、元気に。
そんな内容でした。
号泣したという感想が多いようですが、私は泣かなかったなぁ。
それよりもひたすら「ああ、すごい人だな」という「驚き」「感動」の方が強かったです。
ではネタバレ感想を。
すごいっていうのは、鹿野(大泉洋)の生きる姿勢ですかね。
34歳、筋ジストロフィー。
動かせるのは首から上と手だけ。
アパートに一人暮らし。
生活の全てをボランティアスタッフたちに頼っている。
水!ご飯!
背中がかゆい!
お尻が痛い!
あれが欲しい!
これは嫌だ!
してほしいことを全て口に出して要求。
普通なら立場的に遠慮してしまうところですが、自分が自立して生活するにはこの方法しかない!と完全に割り切って・・・というか、自分はそうする!という意思を前面にだしているところがタダモノじゃない。
その「自立した生活のための要求」に、数人のボランティア達がこんな感じで答えている。
てんやわんやw
お風呂とか衝撃でしたね。
ビニールプールのような浴槽に入り女性ボランティア何人も周りにいて体を洗ってもらっている。
(もちろん大事な部分も)
その時も言いたい放題、ワガママ放題でした。
でも・・・
タイトルの「夜中にバナナ」のエピソードは、夜は不眠症で眠れないのでボランティアが一緒につきあっていて、そこからの流れだったり
たくさんの薬が朝昼晩と分けて用意されていたり
病院では主治医から「強い不整脈が出ていて心臓が弱ってきている。すぐ入院して」と言われたり
野外イベントに出かけた時、めちゃくちゃ楽しそうだったけど
食べたものにあたってお腹をくだしてしまって、筋力がないからトイレが我慢できず・・・・・・・・
だったり。
体は不自由だけど他は元気というわけではない。という部分もしっかりと描かれていました。
ボランティアで医大生のの田中(三浦春馬)は恋人の美咲(高畑充希)を鹿野の家に連れていって、鹿野は美咲が気に入ります。
彼は2人が恋人同士ということは知らない。
美咲は最初は鹿野のやりたい放題な態度に腹を立てるのですが、徐々に気持ちが変わっていきます。
美咲は田中に「大学の教育学部に通って教師をめざしている」と言っていたのですが、実は受験に失敗して今はフリーターをしているという事実が。
自分は恋人に嘘をついている。
でも鹿野は自分に正直に、自分が生きるために素直に人に頼って甘えている。
そこに惹かれていったのかな、と思いました。
でも美咲はデートで将来の話が出たため、ウソをついていたことを告白します。
田中はショックを隠せず二人の関係はギクシャクして自然消滅のような状態になってしまいました。
この後、落ち込んだ美咲が鹿野にこの話を打ち明けた時、鹿野が言った言葉にはハッとさせられました。
それは
「それならウソをウソじゃなくすればいい。今から勉強して大学を目指せばいい」
というもの。
発想の転換!
鹿野には「英検2級を取ってアメリカ旅行に行く」という夢があって、英会話を勉強しています。
自分と比べたら色々な意味で美咲の可能性はいくらでもある。
何かを始めるには制限なんてない。
ここはすごく感動しました。
美咲は受験勉強を始めました。
一方田中は自分が医者になる覚悟があるのか自信を持てなくなり、医大を辞めようと思い始めます。
やがて鹿野は心臓が弱り部屋で倒れてしまい入院。
かたくなに拒んでいた人工呼吸器をつけることになって、声が出せなくなってしまいました。
しかし美咲が見つけてきた「呼吸器の一部の器具を調整することで声が出せた人がいる」という文献を見つけ、鹿野はやる気満々。
ボランティアたちは病院にバレないようにこっそりと器具を調整し、ついに声が出せるようになりました。
大喜びの鹿野と美咲。
医師や看護師(当時は看護婦)たちは結果オーライなので黙認w
こうして鹿野は再び自宅に戻り、痰の吸引など今まで以上にボランティアたちの手を借りて生活をはじめました。
鹿野は自分の退院祝いパーティで美咲にプロポーズしてフラれるんだけど・・・
ある日倒れたフリをして田中と美咲を呼んで仲直りさせたり。
その後田中はもう一度医者を目指す気持ちを取り戻したり。
彼のおかげでたくさんの人が影響を受け、変わっていった。
鹿野が
「人間はやれる事よりもやれないことの方が多いんだ」
と言った言葉がとても印象に残りました。
素直に人に甘えていいんだ、頼っていいんだよ、と。
田中が病院で車いすから落ちた男の子を助けるシーンがあったのですが、彼が素直に田中に「助けて」とお願いしていて。
助けた後で田中がふと彼のベッドの壁を見るとそこには鹿野の生き方を取材した新聞記事が貼ってあって、男の子がまさに「人に頼っていい」ということを実践していたわけですよね。
甘える、頼るってちょっと苦手なことなのですが・・・
鹿野の生き方を見ていて、相手のことを考えて気を使うことは大切だけど、自分の意志もきちんと伝える事ももっと大切。
そうした方がお互いの関係をより深めることができるんだなと実感しました。
そして甘える、頼る、正直に生きるには、相手を信頼することが必要であって。
ワガママな鹿野の周りにいつも人が集まっているのはその「自分の気持ちをダイレクトに伝えていたこと」(=相手を信頼していること)が、大きな理由だったと思います。
信頼されていると知ったら、信頼で答えようとしますものね。
鹿野はその後7年を過ごしました。
最後はカラオケボックスで歌う鹿野とボランティアたち。
劇中で何度も「カラオケに行きたい」と言っていましたが、それをしっかり実現したことが伝わりました。
そして教員になった美咲。
往診にはげむ田中。
遺影の前で話をする鹿野の両親の姿も映り。
そうそう。
劇中、母親(綾戸智恵)の姿も印象的でした。
息子にはめったに会いに来ない。来てもさっさと帰る。
でもそれは自分が息子の世話をしたらそれは自立したいという彼の意志に反するから。
鹿野の方も母親が来ると「帰れ」と反発。
でもそれは母親には母親の人生があるから。
一件冷たい関係に見えるけど、本当はお互いがお互いを思いやっている姿。
倒れて入院した鹿野が、母親の手を握るシーンは、涙腺がゆるんだシーンでした。
最後には鹿野が母親にあてた手紙に、素直な気持ちが綴られていた。
綾戸さんはご自身に介護経験があるし、演技に説得力がありました。
役者さんの話をすると
鹿野を演じた大泉洋ちゃん、大好きな役者さんです。
ワガママ放題の病人を嫌味なく演じられる、さすがだなぁと思いました。
筋肉のない人を演じる・・・
最後の方すごく痩せたなと思って観ていましたが、あとで調べたら最大10kg痩せたそうで、ほかにも出演作が多くある中での役作りは大変だったろうなぁ~。
エンドロールの最後の最後にはご本人の映像が流れ、それは映画と同じ、心から楽しそうな笑顔でした。
(画像がありました)
エンドロール、最後まで観ましょう。
本当にいい映画でした。
当たり前の生活への感謝。
前向きな積極的な行動の大切さ。
ベッド生活、車いす生活への理解。
たくさんのことを明るくポジティブに伝えてくれます。
そして本当のコミュニケーションってなんだろう?と考えさせられる。
鹿野ならどうするだろう?
これから何か悩むことがあったら、こんな思いが頭に浮かびそうです。