『終わった人』ネタバレ感想 | Nシネマ

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昨日はこちらを鑑賞しました。

土日続けて映画、嬉しいな。

 

原作は読んでいません。

 

 

 

 

●あらすじ

大手銀行の出世コースから外れ、子会社に出向したまま定年を迎えた田代壮介(舘ひろし)は、喪失感からネガティブな発言を繰り返す。以前の輝きを失った夫と向き合えない美容師の妻・千草(黒木瞳)との間に溝ができ、満たされない気持ちから再就職先を探すが、うまくいかない。そんな中、ある人物と出会ったことで運命が大きく動きだし……。

 

 

 

 

●結果(★5=満点)

 

★★★▲(3.9)

(連ドラにしたらいいと思う)

 

 

 

 

 

 

 

●感想(敬称略)

 

よかったです。

 

定年後のサラリーマンの悲哀。

 

よく話題になる内容です。

 

正直、目新しい視点とか

気づきとかは

特になかったけど・・・

 

でも、わかりやすく

テンポもよくて

「定年」という

自分にちょっとだけ近づいてきた

もはや他人事ではなくなってきた事を

コメディとして楽しみながら

観ることができました。

 

 

 

主人公の田代壮介(舘ひろし)は

岩手の小さな町から

東大に入学し

メガバンクに就職。

 

支店長時代には

表彰されるほどのエリートだったけど

出世争いに敗れ

今は子会社で

代表取締役専務として勤め

そのまま定年をむかえました。

 

主人公がエリートではなくて

「エリート争いに敗れている」という所が

この話のキーになっていますね。

 

本当なら俺はこんな所にいる人間じゃない、と

思い続け、定年をむかえた壮介。

スーツもなんとなく

高そうじゃないな、と感じます。

出世街道だったらもっと

いかにも高級そうな生地感のスーツだよね。

 

 

壮介は

去り際に部下たちからかけられた

「お疲れさまでした」

「今までありがとうございました」

「ゆっくり休んでください」

という言葉に

「定年て生前葬と同じだな」と思います。

 

た、確かに。

うまい表現、と

感心してしまいました。

 

 

家に帰ると

妻の千草(黒木瞳)、

娘の道子(臼田あさ美)

妻のいとこの俊彦(田口トモロヲ)が

盛大にお祝いをしてくれて

 

俊彦はわざわざ

岩手の壮介の実家に出向き

母親と姉(妹?)からのメッセージと

2人が踊る

岩手のさんさ踊りのビデオを

撮ってきてくれたり。

 

いいご家族じゃないか。

 

しかし壮介は・・・

 

翌日から時間を持て余す毎日。

 

おーい!

まだ一日目だぞ!!

(「終わった人 一日目」のテロップが出て笑えました)

 

袋とじを必死に切ってみたりw

 

家にいても仕方ないので

公園や図書館に行ってみるけど

いるのは年配者ばかりで

俺は彼らとは違う!と思うけど

することはない。

 

 

仕事一辺倒で

定年してからの人生設計を

まるでしていなかったことが

伝わりますね。

 

 

 

千草は勤め先の美容院で

お客さんから

「卒婚」の話を聞きます。

それは

籍はそのままで

別々に暮らす、というものですが

千草はその時は

笑って聞いていました。

 

 

 

壮介は

一人でヒマしているならともかく

家族まで巻き込むので

困ったもんです。

 

美容院に

勝手に車で迎えに行って

ナイトのように「お迎えに参りました」と言い

誇らしげな顔をしますが

友達とスイーツを食べに行きたかった千草は

不満顔。

 

しかし気づくこともなく

千草を若いころの思い出の桜並木に

連れていきました。

懐かしい!と喜ぶ千草。

 

お!これは成功?と思わせて

その後がいけなかった・・・

 

「散る桜、残る桜も、散る桜(良寛の俳句)・・・だよなぁ」

という、なんとも後ろ向きな・・・。

 

千草、うんざりw

「もう迎えに来なくていいわ」

 

壮介ガッカリ。

 

 

 

 

 

そしてある日

好きな石川啄木の古書を買った帰り

岩手の高校時代のラグビー部仲間・

二宮(笹野高史)と

偶然再会。

 

なんと彼は脱サラして

プロレスのレフェリーになっていました!!

「国際試合のレフェリーになるのが俺の今の夢だ!」と。

 

生き生きと夢を語る二宮に比べ

俺はダメだ~!!

落ち込む壮介。

そしてまたうんざりな千草。

 

 

二宮に刺激を受け

「再就職しよう!」と

紹介された小さな会社に面接に行ってみれば

「東大卒のメガバンク出身の人なんて

うちでは緊張しちゃってムリです!」と断られ

「東大卒なのに仕事がないなんてね~。

元気出して!」と

慰められてまたまたガッカリ。

 

 

経歴が唯一誇れるものだったのに

それがじゃまになるなんて

本当にやる気を失いますよね。

 

 

 

 

ところで

さきほどの「散る桜~」の

良寛の俳句とか

石川啄木の本とか・・・

田代が文学好きなことがわかります。

東大では文学部だったのかな??

 

壮介は「俺は大学院に行く!」と言い出し

勉強する宣言をします。

 

お!

ついに目的を見つけた!

 

そして鈴木の薦めで

カルチャーセンターの石川啄木の講座を

受けることにして

そこで受付の久里(広末涼子)と出会います。

 

彼女と壮介は

古書店で一度出会っていて

その時に

岩手の方言を話したので

壮介はそれを覚えていて

「あー!」と。

 

お互い同郷ということで意気投合。

 

壮介、ときめいてる♪

 

定年した日に「恋でもすれば?」と

冗談で言われていたけど

しっかり覚えてますね。

 

 

 

半分は久里目当てで

せっせとカルチャーセンターに通う壮介。

 

岩手の方言で話したり

宮沢賢治や石川啄木など

好きな文学のことで盛り上がって

 

思い切って

ごはんに誘ったら成功したり

 

 

 

久里の好きな

宮沢賢治展で待ち伏せして

一緒に観覧したり。。。

なかなかいい感じ?

まさか!?

 

この待ち伏せのシーンは

久里が「サングラス似合いますね」って言ってて

あ、『あぶない刑事』のことだな、と

笑ってしまいました。

 

 

 

ところで壮介は

それより前に

よこしまな理由で

スポーツクラブに入会していました(笑)

 

 

でもそこも

結局

いるのは

年配者ばかり。

 

時間帯が昼間じゃね~。

無理もないって。

 

 

一人だけ若いメンバーの

イケメン鈴木(今井翼)は

おば様たちのアイドル状態です。

 

彼はIT会社を経営していて

シニア向けのアプリを開発するため

ここで市場調査をしていたのでした。

 

鈴木は壮介の経歴や今の環境を知った上で

「後悔はないんですか?」と問いかけます。

 

「YES」と答えた壮介ですが・・・

完全に強がりですよね。

 

 

 

やがて鈴木は

壮介を自分の会社に招き

「うちの顧問になってほしい」と言います。

 

理由は壮介が

東大卒でメガバンク出身だから。

若い会社は信用がないので

そういう肩書を持つ人が必要だと。

 

率直に

自分の気持ちを伝える鈴木に

壮介は

顧問を引き受けることにしました。

 

社会から孤立している気持ちを

感じているところに

必要だと言われ

さらに

それまで邪魔になっていた

自慢の肩書がほしい、と

言われたことが

嬉しかったんだろうなぁ。

 

 

その日の夜

美容師の千草に「髪を染めてほしい」と

伝えました。

 

壮介から愚痴ばかり聞かされ

うんざりしていた千草は

この再就職に大喜び。

「2か月に一回染める」と言いました。

 

 

そうして

社員からも信頼をされ

生き生きと過ごす壮介でしたが

 

ある日鈴木は会社で倒れ

そのまま亡くなってしまいます。

 

予想外の展開で

とてもビックリ。

 

  
 

田代が文学好きなことがわかります。

東大の文学部だったのか

 

 

ここまで劇中

「壮介=定年後の男性の人生」だけを見ていたので、

この若いパワーあふれる鈴木の突然の死は

人生いつ何が起こるかわからない・・・と

改めて思い知るところでした。

 

 

壮介はいったんは会社を辞める決意をしますが

会社から「社長になってほしい」と頼まれました。

 

千草は

「顧問と社長じゃ責任の重さが全く違う」と

猛反対しますが

壮介は引き受けることに。

 

「社長」という肩書を

持ってみたかったんだろうなぁ。

 

 

そして

社長になって

部下からは慕わ仕事は順調。


海外と3億の契約を結んだりして

とても充実した毎日。

 

 

悩みを打ち明けられた

久里とも

いい感じになって

出張中の熱海で会うことになって

これはいける!!!!と

有頂天になったり。

 

 

まぁこっちは

結局振られて

ホテルの部屋で暴れてるという

悲しい結末w

 

ただ、この時に

壮介が久里に言った

 

「35歳になって芽が出ないのなら

もう絵本作家になる夢を諦めた方がいい。

それまでの10年が無駄になる?

いや、10年ですむ。

このまま夢を追いかけていたら

人生が無駄になる。

やめる勇気も必要だよ」


という言葉は

久里が「ひどい事言いますね」と

言った気持ちもわかるけど

壮介が言うことも

「確かに」と思いました。

 

ある程度の

年齢や経験を重ねた人だからこその

言葉ですよね。

 

 

 

 

 

 

さて壮介はその後

俊彦の家に。

俊彦はイラストレーターなので

千草の美容院の開店チラシを

デザインしていて千草や道子も来ていました。

 

と、そこへなんと!

久里がやってきました!!!

 

なんと久里は俊彦の彼女だったのです!!!

 

ひえええーー!!

 

俊彦が若い女性にモテる・・・という

会話がそれまで何度も出てきたけど

これの伏線だったのかーー!

 

なんとかその場をとりつくろった壮介ですが

帰り際

むすめの道子から

「お父さんの好きな人ってさっきの彼女でしょ?

表情見ればわかる。

女性が年上の男性につきあってあげるって

よくあることだよ」と慰められるww

 

 

 

そして会社の方もトラブルが。

 

海外との取引に失敗し

3億の損失を出し

倒産へ。

 

社長である壮介に契約上

負債がのしかかり

私財を整理しても

1000万の借金が残りました。

 

 

そのころ千草は

働いて貯めたお金を資金に

独立して店を出す準備をしていましたが

この話を聞き

「だから社長になることを反対したのに勝手に決めて!

自分の貯えを使うって何!?

夫婦で貯めたものなのに!

結局あなたは自分一人で稼いだものだと思っているのよ!」

と激怒。

 

 

「離婚しよう」という壮介に

千草は荷物をまとめはじめ・・・

 

壮介に

「離婚はしない!でももう顔も見たくない。

出て行ってちょうだい!」

 

おーい!!

追い出すんかい!!笑!

 



仕方なく

カプセルホテルで過ごす壮介。

 

その後

岩手の実家に帰って

のんびりしたり

ラグビー部の仲間と再会して

高校の後輩の試合を見に行ったり

思い出話に花を咲かせたり・・・

 

↓若いころの壮介

 

 

そうして東京に戻った壮介は

美容院をついに開店する

千草のところに。

そこには娘の道子もお祝いと手伝いに

来ていました。

 

「岩手に戻ろうと思う。

ラグビー部仲間から仕事を手伝ってほしいと

言われてるんだ」と言う壮介は

道子に

「パパは甘い。

パパは東大出て東京勤めだったから

みんなが認めてくれていただけだよ。

岩手に戻ったらただの人だよ」と

厳しい言葉を投げかけられ、

千草からは

「卒婚しましょう」と言われてしまいました。

 

冒頭に出てきた

卒婚が

ここで出てきたかーー!

 

 

 

 

そして卒コンを受け入れた壮介は

岩手に戻ることに。

 

その前に久里が会いに来て

「絵本作家になることはやめました。

熱海でハッキリ言ってくれて

ありがとう」とお礼を言われました。

 

自分の経験が

役に立ちましたね。

 

 

そうして岩手に戻った壮介は

ラグビー部の仲間と飲み会をします。

 

そこで思い出話やあれこれ

話しているうちに

自分の今の状況

(出世コースから外れ、今は

借金があって無職、妻とは卒婚)を

打ち明けました。

それまでの壮介には

ありえなかったことですよね。

 

仲間たちは彼を励まし

自分たちだって色々ある!!と。

 

さんさ踊りをみんなで踊りました!!

 

このシーンでは

二宮(笹野高史)が

カツラを脱ぎ捨て

壮介に続いて

自分をさらけ出した所が

よかったです。

 

笹野さん、若く見せる(65歳)ために

カツラ?

でもなーんか不自然だなぁ。

・・・と思っていたら

それで正解だったのかwww

 

 

 

ラストは

岩手で過ごす壮介の所に

突然千草がやってきて、

とても穏やかな顔で

「2か月に一回

髪を染めに来るわ」と。

いいラストシーンでした。

 

この「卒婚」という関係が

2人にはちょうどよかったという

ことですね。




 

しかし『リング』の中田秀監督が

こんな日常を描いた作品を

撮るとはビックリです。

 

でも、人を怖がらせるのも

日常を描くのも

人の心理がわからないとできないから、

同じなのかもですね。

 

 

 

 

 

この映画

うちのダンナさんは

イマイチだったようです。

 

「舘ひろしがカッコよすぎて

黒木瞳も綺麗すぎて

全然共感できなかった」ってw

 

うーん。

確かに舘ひろし脚長いなぁ・・・

黒木瞳綺麗だなぁ・・・って思って

観てはいたけどw


男と女では

見方が違うんですかね。

 

勝手な想像ですが

原作が

内館牧子先生だから

そういう夫婦の設定なのかもだし、

美男美女をキャスティングして

ほしかったのかも。

 

 

普通~な家族の映画だったら

山田洋二監督にまかせましょうw

 

 

 

この作品、

連ドラで観てみたいです。

 

最初に書いたように

新しい視点とかはないけど

話の展開や

それぞれのエピソードは

興味深いものだったので、

じっくりゆっくり描いたら

さらに感情移入できそう。

 

 

 

壮介は不満の残る会社人生で

定年後もうまくいかなかったけど

なんだかんだ言っても

家族がいて

故郷に戻れば学生時代の友人もいて・・・

 

恵まれていますよね。

 

結局は「人」なのかな、と思います。

 

 

定年後の人生を描いた映画だけど

仕事をしている時も辞めてからも

どんな時も「どうやって生きていくか」を

考えることが大事、ということを

伝えているのかな、と思った作品でした。