11/10(土)午後、初めて訪れた京都コンサートホールで、バンベルク交響楽団来日公演を聴きました。

バンベルク響の実演に接したのも今回が初めてです。

バンベルク響と云うと、私にはN響名誉指揮者でもあった故ホルスト・シュタインとの結び付きの印象が強く、両者による来日公演のチラシも幾度か眼にしたのですが、当時N響へ定期的に客演し、ベートーヴェンやワーグナー等で数々の名演を繰り拡げていたシュタインのこと、バンベルク響との公演もいずれ聴く機会があるだろうと先送りにし続けてしまったことが、今となっては悔やんでも悔やみきれません。

今回の日本各地での一連の公演は、「祝!ブロムシュテット85歳」との銘の下、バンベルク響&N響名誉指揮者の巨匠ヘルベルト・ブロムシュテットの指揮により行われました。
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一昨年4月のN響とのマーラー、ブルックナー、ベートーヴェン、昨年9月のN響とのシベリウスラフマニノフシューベルト、ブルックナーそれに洗足学園とのチャリティー演奏会等々、近年素晴らしい名演の数々をもたらしているブロムシュテット(とりわけ一昨年のマーラー/交響曲第9番は心身共に打ち震えるような感動的演奏だった)故に、今回もまた大いに期待して行きました。

演目は…、ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」&第7番という、一見ありそうで実のところコンサートではなかなか出逢うことのないカップリング。
あたかもメインディッシュが2つ並んだかのようなこの演目、ただでさえ指揮者&オケにとっては身体的にも精神的にも少なからずハードなもののように思えますが、ソナタ形式の楽章の提示部等の反復指示を忠実に実行するブロムシュテットともなれば(実際今回もその通りだった)、物理的にも尚更でしょう。
尤も11/3(土・祝)の福岡公演は、ベートーヴェンの7番にブルックナー/交響曲第4番「ロマンティック」という、更にヘヴィーで通常ではまず考えられないプログラムだったようですが。

11/1(木)夜の東京・サントリーホールでの公演も京都と同一プログラムだったのですが、この時期の平日夜のコンサートとなると、折角チケットを入手しても仕事の関係でフイにしてしまうリスクが高いので、週末の京都遠征を決めました。

さて前半の「エロイカ」、第1楽章冒頭の変ホ長調の主和音の連打とそれに続く流麗かつ雄渾な第1主題からして、力強くも豊麗で美しい響きに惹き込まれていきました(それがバンベルク響の個性なのか判断が付きかねるけれど少なくともブロムシュテットならではのものであることは間違いない)。時に凄愴な展開部や、再現部&コーダに於ける各パートの第1主題の受け渡しの美しさ、それを承けての高らかな頂点の構築もまた流石でした。
第2楽章の葬送行進曲も、その核心とも云うべき再現部のフガートの悲劇性こそ以前聴いたライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団やN響との演奏に比べると、やや物足りなさは残ったものの、中間部の美しさ等がやはり印象的でした。
スケルツォの第3楽章や変奏曲の第4楽章も、推進力に満ちた素晴らしいものでした。

20分休憩を挟んでの「第7」、第1楽章の序奏からして「エロイカ」の冒頭同様、力強さと緻密さ・繊細さとを以て築き上げられていきました。主部の提示部に於ける第1主題の登場の美しさとその後の総奏の迫力、再現部途中で一瞬顔を覗かせる一抹の哀しみ、コーダの低弦のオスティナートを基盤に構築されていくクライマックスの壮大さ…。
「不滅のアレグレット」第2楽章主部の哀切さと中間部の美しさ、第3楽章の躍動感も見事でした。
かつて朝比奈隆が「下手をすると演奏者が「全軍突撃の上玉砕」と云った事態に陥りかねない」と評した第4楽章、ブロムシュテットはかなり速めのテンポを採りながらも決して上滑りすることなく、細部のディテールも掘り下げつつ、凄絶なクライマックスを現出していました。

アンコールで採り上げられたのは、やはりベートーヴェンの「エグモント」序曲。
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ここでもブロムシュテットは凄絶かつ緻密な演奏を展開していました。

それにしても…、85歳を迎えても尚、円熟を深めると共にあたかも年齢に反比例するように清新さ・瑞々しさをますます高めていく、ブロムシュテットの「奇蹟」には、畏敬の念を抱かざるを得ません。

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