3/26(土)午後、すみだトリフォニーホールで群馬交響楽団東京公演を聴きました。

戦後間もなく発足した歴史ある地方オーケストラとしての群響の活動については、かねてより伝え聞いてはいたものの、演奏はこれ迄1度も聴くこと無く打ち過ぎてきたのですが、昨秋N響定期に足を運んだ際にこの東京公演のことを知り、私の大好きなベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番とブラームス/交響曲第2番が演目に挙がっているのを見て、(勝手な思い込みながら)どちらも群馬の自然豊かな風土にも相応しい気がして、開催日時が土曜の午後であることも後押しとなりチケットを購入しました。

本来この公演は、「地方都市オーケストラ・フェスティバル2011」特別参加として行われる筈でした。しかし3/11の大震災の状況を勘案した実行委員会の判断でフェスティバルは中止(関西フィル(3/20)、セントラル愛知響(3/21)、広島響(3/27)、それに同じく特別参加の大阪響(3/19))。群響の内部でも開催の是非を巡り随分と議論があったようですが、震災復興支援と形を改めての単独開催との結論に到ったそうです。
震災の為来日キャンセルとなったカール=ハインツ・シュテフェンス(私はこの指揮者を知らなかったのだけれどバイエルン放送響やベルリン・フィルのクラリネット奏者だったとか)に代わりタクトを執ることとなったのは、首席指揮者兼芸術アドヴァイザーの沼尻竜典。私は沼尻氏が2010年度から群響のポストに就いたことを不明にも知らなかったのですが、以前日生劇場で観た二期会公演に於けるベルク/歌劇「ルル」で感服した経験があり、また近年びわ湖ホール芸術監督としても着実に評価を高めているとも耳にしていたので、期待が高まりました。

折角ホールのある東京錦糸町迄出掛けるなら、午前中東武鉄道伊勢崎線東向島駅にあるという「東武博物館」に寄ってみようかと考えたのですが、こちらも震災の影響で当面休館とのことで断念。

我が家から錦糸町に行くには、横浜か品川で京急本線から横須賀線・総武線快速に乗り継ぐのが一番手っ取り早いのですが、今回は品川で京浜東北線快速に乗り換え、秋葉原で一旦昭和通り側改札を出て、久々に「書泉ブックタワー」に寄り交通関係の冊子を3冊程買い求め、それから総武緩行線で、途中車窓から隅田川と背後の建設中の東京スカイツリーや、
NaruNaraの徒然に…-隅田川
大相撲八百長疑惑の渦中の両国国技館を
NaruNaraの徒然に…-両国1
NaruNaraの徒然に…-両国2
眺めつつ錦糸町へ。

錦糸町はこれ迄通ったことは何度もあるものの、下車したのは今回が初めて(本来なら3/12の新日本フィル定期公演で訪れている筈だったのだけれど)。まずは腹拵えをと、北口の商業施設「アルカイック錦糸町」10Fのレストラン街に行きましたが、何処も非常に混んでいて、漸く昼食を済ませ店を出た時には既に開場迄30分を切っており、駅周辺の散策は取り止めホールへ直行しました。

NaruNaraの徒然に…-群響1
NaruNaraの徒然に…-群響2
NaruNaraの徒然に…-群響3

トリフォニーホールには今回初めて入りましたが、木目調の落ち着いた雰囲気の中にも、ト音記号を模した照明設備等の遊び心が見られ面白かったです。

14:30からの渡辺和彦(音楽評論家)のプレ・コンサート・トークに続き、15:00からの公演では、冒頭五十嵐楽団常任理事兼事務局長が挨拶に立ち、先述の今回の公演開催に到った経緯や、ホワイエで楽団員が開演前・休憩時間・終演後に義援金を募ること、また本日の群響グッズ類販売収益も全額義援金に充てること等が述べられ、そしてバッハ/管弦楽組曲第3番~「アリア」の献奏の後一同起立黙祷。

本来の1曲目のドビュッシー/牧神の午後への前奏曲の後、ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番でソリストを務めたのは小菅優。小菅さんの演奏を聴いたのは今年1月のN響Aプロ定期(ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番)に続き2回目です。第1楽章冒頭のピアノのみによる第1主題の提示こそ何か靄ついた感があったものの、以後はオーケストラ共々多彩なニュアンスを湛えた演奏が繰り広げられ、とりわけ第1楽章展開部の195小節目以降や231小節目以降のピアニッシモの部分の繊細な美しさはこの上もなく、再現部冒頭の253小節目以降のスフォルツアンドも決して粗くならずに豊かに響いており、第3楽章の主要主題の軽妙さと第1副主題の流麗さとの対照も見事でした。独特の清冽さを湛えたこの曲、第5番「皇帝」以上にソリスト・指揮者・オーケストラの音楽性の真価が顕わになってしまう、或る意味ベートーヴェンのビアノ協奏曲全5曲中一番の難曲だと私は思うのですが、流石に小菅・沼尻・群響の顔合わせは期待通りの演奏で応えてくれました。アンコールのシューマン/子供の情景~「詩人は語る」も絶品でした。

休憩時間にホール内を散策していたら、一角に4本のワーグナー・チューバが展示されているのが眼に入りました。近付いて説明板を読んでみると、往年の日本を代表する名ホルン奏者で、N響の顔とも云うべき存在だった故千葉馨氏から寄贈されたものだとのこと…。

後半のブラームス/交響曲第2番も、弦と管とが程良く溶け合い、また第1楽章第2主題や第2楽章のそこはかとない憂愁、活気に充ちた第4楽章と、やはり「ブラ二」はこうでなくては…と唸らせるものがありました。

終演後グッズ売場を覗いてみると、CD類の他に「群響だるま」なるものが。一見すると只の黒いだるまとしか思えず、「これの一体何処が「群響だるま」?」と訝しんたのですが、手に取り良く良く眺めてみると、襟元が黒の燕尾服&蝶ネクタイとなっており、それで得心がいきました。一瞬買いたい衝動に駆られたのですが、先述の秋葉原で購入した冊子で既に鞄が一杯だったので諦めました(義援金については開演前に據金してきたけれど)。

帰途も総武線快速・横須賀線利用ではなく、東京地下鉄半蔵門線で隣駅の押上へ移動し(東武伊勢崎線との相互乗り入れは中止していた)、暫し薄暮の東京スカイツリーを眺めてから、
NaruNaraの徒然に…-押上1
NaruNaraの徒然に…-押上2
NaruNaraの徒然に…-押上3
NaruNaraの徒然に…-押上4
NaruNaraの徒然に…-押上5
NaruNaraの徒然に…-押上6
京成線から京急線へ直通の都営地下鉄浅草線快速特急で帰りました。