鎧を纏ったかように足取りが鈍っていた。
「おい、
こんな所で何やってんだ!」
「‥ごめんなさい」
「謝るより先にやる事があるだろ。
お前ん家どこだ!?
送っていく。」
「‥無いです。」
「こんな時に冗談言ってる場合か、
ホラッ行くぞ!
‥ッ」
そう言って彼女の手を掴もうとすると信じられない現象が起きた。
俺の右手は彼女の身体をすり抜け、
掴む事は愚か触れる事すら出来なかったのである。
「‥どういう事だ‥?」
「‥すいません、騙すつもりなかったんです」
その後に続く言葉はできれば
受け入れたくないようなものばかりな気がして嫌だった。
「ここ数日間の異常気象。
アレ、わたしのせいなんです。」
何だって?
「神様の逆鱗に触れてしまったから、理に反したから
あのような天罰が下ったのです。
」
「何を言っているんだよ‥」
「覚えていらっしゃいますか?『みー』の事。
信じがたいお話でしょうが
わたしは生前あなたに可愛がっていただいたインコです…。
天上界であなたの姿を幾日も幾日も見ていました。
巧さんは公園に来て、わたしの事を思い出してくださいましたよね。
私は‥ただお礼が言いたかったのです。
それと元気で暮らしていると伝えたかった。
生前の姿では言葉を発するも伝えられませんでしたので‥。」
「‥そうか。実は、何となく
そうなんじゃないか、とも思っていたんだ。
あの時は寝ぼけてて気づかなかったけど。
お前、教えてないはずの俺の携帯番号知ってたり、
発言が過去の出来事を指していたり妙だったもんな。
初めて会った時、
とてもじゃないけど他人とは思えなかったしな‥。」
「あらら、お気付きだったなんて」
気づくに決まっている。
―何年も一緒に暮らしてきたんだ。
ザァァァッァァッ
雨の激しさが増し、一層に強くなってくる。
「あはは‥巧さん。
お家に帰らないと本格的に風邪引いちゃいますよ?
」
どう聞いても渇いた笑いにしか聞こえない。
「お前こそ風邪引くぞ?
‥数年ぶりに我が家帰ってくるか?」
「お母さん驚きますよー。
それとわたしはそろそろ帰らなければ‥。
この姿で人と接触する事すら本来は罪なのです。」
「‥そっか」
分かってたけど、
言ってみただけだ。
(続く)