岡田目線
今日は、AKBクイズ大会で優勝した私達チーム4メンバーのご褒美企画撮影日。
みんなでテントをはって、お昼から夜まで一緒にBBQしたり、花火をしたり、
その様子をメンバーが交代でカメラマンとなって撮影する。
スタッフの方は、準備を整えた後近くのコテージで様子を見るだけで、
あとはメンバーが自由に楽しめるように、自然な姿が撮影できるように、干渉してこない。
何かあればすぐ駆けつけられるように、まぁまぁ近くにはいるけれど、それでもここまで自由にやらせてもらえるお仕事は初めてで、
むしろ本当にプライベートで旅行に来た気分で、朝から死ぬほどワクワクしてた。
早速私がカメラマンとなって、楽しそうにBBQの準備をするメンバーを撮影していく。
「ずっきー、ずきちゃんは何をしてるの?」
「私はうちわ担当です。」
「なーみんが、野菜を焼いてくれてまーす!」
「奈々さん見てください、カボチャが焦げましたー!」
「じゃあそれは濱がたべまーすw」
「なんでやねん!」
楽しくて、嬉しくて、みんなの笑顔を一瞬も逃さないように撮影をする。
その中に、一際愛しい笑顔を見つけた。
無意識に彼女の後ろ姿を撮影する。
眩しい太陽の光に照らされて、今にも消えてしまいそうなほど輝く彼女に、なぜだか声がかけられない。
いつもなら、見つければすぐ近づいて、カメラ目線をもらいに行くのに、なんだかそれが出来なかった。
優しい風に吹かれて彼女の髪がなびく。顔にかかって邪魔になったのか、髪をポニーテールに結ぶ彼女の仕草一つ一つから目が離せない。
「あ!奈々さんがゆいりーさんばっかり撮ってる!」
メンバーに言われてハッと我にかえる。
「あははwごめんごめん。だってバレたらゆうちゃんカメラ嫌がるかなぁと思って。」
誤魔化さなきゃと焦るほど声が大きくなる。
流石にこちらに気づいた彼女が、なになに?と近づいて来た。
事情を聞いて、「絶対カットしてもらう」と言う彼女に、えぇーなんて落ち込んだふりをしながら、やっぱりカットして欲しいなと思う。
私だけが知っている姿。
私しか見ていない所。
あまりに儚くて、眩しすぎる彼女は、私にとって太陽のような存在で、近づきたくても近づけないあの姿を、誰にも知ってほしくない。
自分の心に閉じ込めて、必死に守ってる想いが、溢れてしまわないように、無かったことにして欲しい。
「じゃあそろそろカメラマン交代しよ」
そう言って私の手からカメラを取って、早速メンバーを撮りに行く彼女は、とても優しい笑顔をしていて、
コロコロ変わる愛しい表情を、今カメラに抑えられないことが悲しかった。
だけど、せめて見逃さないように、忘れないように、
ずっと彼女を目で追ってしまう。
すると、彼女がこっちに近づいて来て、
「なぁちゃんもお肉食べな」
と、柔らかく笑う。
あ、綺麗。
カメラを持ってるのは彼女なのに、
自分は手ぶらなのに、
カメラを構えるように指で枠を作って彼女を囲む。
私だけの記憶。
「あはw何してるの?」
突然の私の行動を、変なのーとケタケタ笑う。
そんな何気ない仕草も見逃さないように、身体の芯に焼き付ける。
「そんなにカメラ持ちたいの?」
と不思議そうに聞いてくる彼女に、違いますよと答えて、お肉を頬張る。
「美味しい?」
「うわ!美味しい!!!」
「お!いい表情ですよ」
カメラマンになりきって私の姿を撮影する彼女に、ゆうちゃんもどうぞ、とお肉を食べさせると
「ん!おいひい!」
と幸せそうな表情。撮れてないのがもったいないな、と思うけど、自分だけが見れたと思うと悪くない。
だんだん暗くなってきて、BBQも終え、花火を始めた私達。
カメラマンは私で、誰が一番最初に火が消えるか競争してる所や、火を移し合う姿、絵になるなと思ったもの全てを撮影する。
今日1日、自分からやってるから仕方ないけど、私が撮影することが多くて、あまりカメラに映った記憶はない。
でもそれでも全然かまわない。メンバーの最高の表情を撮れた自信があるから。
私にしか撮れない表情をたくさん撮れた自信があるから。
そんなことを思ってると、誰かに肩をトントンと叩かれた。
振り向くと彼女が立っていて、手には花火を持っていた。
黙ってそれを私に渡すと、交換するようにカメラを私の手から取る。
とりあえずライターで火をつけて、花火をじっと眺めてると、満足そうに笑って、別のメンバーの元へ行ってしまった。
「あ!奈々さん火分けてくださーい」
メンバーの声で我にかえった。
「いいよ。」
「ありがとうございます!」
この感じが、なんだか懐かしくて、くすぐったい。
青春って感じがして、花火が出来て良かったと思う。
それと同時になるほどなと納得する。
メンバーに火をわけて、すぐに彼女の姿を探した。
見つけてすぐに近くに寄る。
「ゆうちゃんもどうぞ」
彼女のカメラを取って、代わりに花火を渡す。
彼女がしてくれたことを、お返しする。
「ありがとう。」
すると別のメンバーが寄ってきて
「私が撮りますから、2人で花火して下さい」
と、私の手からカメラを奪った。
彼女の方を見ると、目があって、思わず笑う。
メンバーの気遣いに甘えて、花火を持って彼女の隣に並んだ。
「火、わけてくれますか?」
「はい、どーぞ。」
彼女にぴったりくっついて、花火の火を移してもらう。
その代わりに、私の体温を彼女に移すようにもっと近づく。
こんなに、誰かを好きになったのは初めてだ。
いつも一緒にいるのに、それでもこうして隣に並ぶとドキドキして、嬉しくて、あったかい。
花火に照らされた彼女の横顔をじっと眺める。
あんま見ないでと照れる姿が可愛くて、ごめんごめんと花火に視線を戻す。
「今日は楽しかったね」
「うん、楽しかった」
「お肉美味しかったね」
「野菜もね」
「沢山撮影してくれてありがとね」
「いいんですよ。私が好きでやってるんです。」
「うん。ありがとう」
「花火、綺麗だね。」
「ですね。」
「なぁちゃんも、、、」
「なぁちゃんも?」
「同じくらい綺麗だなって、思っ、、た、///」
自分で言って恥ずかしくなったのか、暗い中でも顔が真っ赤なのが伝わった。
どうして彼女はこんなにも私のつぼをついてくるのか。
愛おしくてたまらない。
照れる彼女が可愛くて、思わず笑いが止まらない。
なんで笑うのーと怒る彼女に、もっと近づいて、
誰かに撮られてるのとかもうどうでもよくて、彼女の肩にもたれかかる。
いつの間にか、どちらの花火も消えていた。
彼女がドキドキしてるのが伝わって、嬉しくなる。
「ゆうちゃんも、すごく綺麗です。」
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今日は、完成したVTRを特別にチーム4で見る日だ。
再生ボタンを押すと、メンバーの楽しそうな笑い声に溢れてて、幸せな時間だったと改めて実感する。
ふと、VTRの雰囲気が変わって、しっとりとしたBGMが流れ始めた。
その時に映された映像を見て、彼女の顔が赤くなる。
私が密かに撮っていた、彼女の後ろ姿や、食べ物を頬張る姿。花火を楽しむ姿が流れている。
カットして欲しいって言ったのに、と思う。
しかし、次に流れた映像を見て、今度は私が赤くなるのを感じた。
私が花火をする後ろ姿や、メンバーと話している所を、私だけを、ピンポイントで狙って撮影された映像だった。
誰が撮ったかなんて、言わなくてもわかる。
周りのメンバーが冷やかしてくるのを聞き流しながら、映像に釘付けになる。
カメラにあんまり映ってないなんて、とんだ勘違いだった。と、思わず笑みがこぼれる。
なんだ、私と同じじゃん。
もうVTRでは、BGMに合わせて他のメンバーが楽しそうに花火をする姿が流されている。
ゆうちゃんは、私のことで頭がいっぱいなんだと自惚れる。
やっぱり、カットされなくて良かった、と思う。
最後に、ぴったりくっついて花火をする、私達の後ろ姿が映された。
2人で一緒に映ったのは、最後のこれだけだったけど、お互いがお互いをずっと目で追ってるってことが、このVTRを見て分かった。
それが嬉しくて、たとえ勘違いだとしても、そんなことどうでもいいくらいに、幸せで、苦しくて、いろんな感情が溢れて止まらない。
ゆうちゃん、ありがとう。
ゆうちゃんがいる限り、私は表舞台に立ち続ける。