ここからは岡田目線ではなく作者目線というか、語り手目線で物語が進みます。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あの日から、岡田は毎日毎日隙間時間を見つけては彼女に会いに行くようになった。

トランプをしたり、折り紙を教えたり、一緒にお絵描きをしたり。

そうやって一緒に過ごす時間が岡田にとって、とてもかけがえの無いものとなっていた。

普段は食堂で食べるお昼も、彼女と一緒に食べるために早起きをして自分でおにぎりを作り、こっそり彼女に会いに行くようになった。

決してバレてはいけない。
気がつけば、もう後戻りできないところまで来てしまっていた。

そんな毎日がどれくらい続いただろうか。

お互いに、『ゆうちゃん』『なぁちゃん』と呼び合うことに違和感や躊躇いが消え、

一緒に過ごすことが当たり前になって、

無機質で何もなく、真っ白で冷たい雰囲気だった部屋は、暖かく優しい雰囲気に変わり、

微笑むばかりであまり変化のなかったように思う彼女の表情は、今ではとても豊かで、

そんな姿を見ることが、岡田の生きがいと言っても過言ではないほどだった。


監視係と死刑囚という関係であることを忘れてしまうくらいに、普通の生活を送っているかのような会話に、まるでこの部屋が自分の帰るべき場所であるかのような、そんな錯覚に陥るほどに、彼女との時間に居心地の良さを感じていた。

例えば、入浴時間を終え戻っても髪は生乾きで、熱いからと腕をまくる彼女に対し

「ほらー、いつも言ってるじゃないですか!ゆうちゃんは冷え性なんだからちゃんと体あっためないとダメですよ!」

と、言う岡田。しかしそんな岡田の表情は、とても優しく、呆れながらもそういう所も愛おしいよと物語っていて、それを受ける彼女も、
「ごめんごめん、次からは気をつけるから〜!」
と、満更でもなさそうで、ここが監獄であるとは到底思えない会話。当たり前になりつつある彼女達の、2人だけの日常。

岡田自身、こんな他愛のない会話に、まるで恋人のようだ、まるで親子のようだ、まるで新婚夫婦のようだ、まるで、、、

と、いろんな思いを馳せていた。


寮に戻っても、明日はゆうちゃんと何しようかなと、浮かんでくるのは彼女のことばかり。

これ、ゆうちゃんにも食べてみて欲しいな。
この番組、ゆうちゃん好きそうだな。
この服、ゆうちゃんに似合いそうだな。

どこにいても、何をしていても、結局彼女に結びつく。
喜ぶ顔が、楽しそうな笑顔が、はにかむ笑顔が、照れる姿が、、、

思い浮かべるだけで優しい気持ちになれる。

無性に会いたいなぁと思う。

触れたいと思う。

もう完全に、彼女に惚れてしまったようだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

岡田が、彼女の監視係になってから半年が過ぎた頃、突然向井地に呼び出された。


岡「どうかした?」

向「あのさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、、、」

岡「なに?」

向「勘違いだったらごめんなんだけど、その、最近、というかちょっと前から、なぁちゃんなんか良いことあったのかなぁっていうか、よくさ、こっそり、っていうのかな、なんか、隠れるみたいに抜け出すこと多いし、早起きしてご飯作ってるのとか、実は知ってて、、、それで、、」


言いたいことは定まっているのに、なかなか言い出せないのが岡田に伝わる。

向井地の気遣いを感じる。岡田は、なんとなく、向井地の聞きたいことを悟った。


岡「何が言いたいの?」

分かるからこそ、バレてはいけないと焦り、責めるような口調になる。

心臓が破けそうになる。

向「はっきり言うとね、なぁちゃん自分の担当の子とこっそり会ってるのかなって、思ってる。私だけじゃなくて、込も、りんりんも、多分茂木さんとかも、、、」

そう言って俯く向井地。
まだ確信しきれていないような聞き方なのに、バレていることがはっきりと分かる。そして、それは向井地だけでなく多くの人にばれている。


警告だ。そろそろやばいぞという、厳重注意。

岡田もほんとは気付いてた。いつ、言われてもおかしくないと思っていた。

それをわかってて、会っている。

岡「ごめん、、、」

ごめん。それでも、ほっとけないから。そう、心の中で呟いた。

向井地が顔を上げた。その顔は、ひどく真っ青で、今更になって、やばいかもという焦りが、岡田の心に押し寄せた。