na0の転がる石 苔まみれ

スピッツ 『とげまる』 2010年10月27日発売
UICH-1803 ユニバーサル


前作『さざなみCD』は「スピッツがスピッツである」ということを証明したアルバムで、ネオアコではないがキラキラとしたギターポップの徹頭徹尾「スピッツらしさ」に溢れた作品だった。正直最高傑作であると思ったし、それは今でも変わってない。じゃあ今回の『とげまる』 はダメだったのかというとそんなことはもちろんなく、『さざなみ』と『とげまる』ではアルバムの趣旨が全然違うから比べることができないのだ。


『さざなみ』は言わばスピッツがスピッツであることに作為的であったといえる。意識してスピッツっぽさを再現していたと言い換えてもいい。『点と点』以外はシングルとしてそのままリリースしても通用するくらいのクオリティで、ちょっと嫌な言い方をすれば既視感すら感じられた。だけど逆に言えば昔からのファンに応えたとも言えるし、新規ファンにも入りやすいアルバムで、スピッツとはどんなバンドなのかの説明が完璧な、いってしまえば「第2のデビューアルバム」だった。


で、やっと長い前フリを終えてやっと今回の『とげまる』のはなしになるのだが、『さざなみ』と違うって言うことは『さざなみ』のような既視感はないのかというともちろんそんなことはなく、『ビギナー』『シロクマ』『君は太陽』などのシングル曲は安心スピッツ印100%、スピッツっぽさ全開である。だがそれ以外の曲に関して言えばそうでもなく、最初にさざなみはネオアコっぽくキラキラしてるといったが、今回はギラギラと鋭く、どちらかというとエモいのだ。一番その傾向が強いのは『恋する凡人』、次いで『幻のドラゴン』だろうか。


ではなんでこんなことになったのか。それはこのアルバムが「スピッツがスピッツ以上である」という決意表明をするアルバムだからだ。これだけじゃちょっとよくわからないので少し言葉を足すと「これからのスピッツはこれまでのスピッツ以上である」ということだ。ぶっちゃけもう変わる必要なんてなくそれまでのスピッツのままでもだれも責めないだろう。でも彼らは現状に甘んずることなくそれよりも先に進んでいくことを決意したのである。それも、くるりのようにアルバム毎にジャンルを変えるのではなく、あくまで一貫して「スピッツであること」を守り続けて、である。


この先もずっとスピッツはスピッツであるが、ただより洗練されたスピッツになっていくことは間違いない。今回オリコンで1位をとれなかったのは残念だが、少なくとも1位に相当する内容であったことは疑う余地もない。スピッツらしいキラキラもスピッツらしくないギラギラもひっくるめて、スピッツの更なる進化に期待したい。