na0の転がる石 苔まみれ

毛皮のマリーズ 『毛皮のマリーズ』 2010年4月21日発売


マリーズとBAWDIESはロックのルーツを現代に鳴らしている、という文脈では同じである。ただBAWDIESはそれを黒人の声で唄うことで完全に再現しようとしているが、マリーズはそれをオリジナルの、一聴すれば嫌悪感すら覚えてしまうような「志磨遼平」の声でやろうとしている点でBAWDIESよりも独創的だ。さらにいってしまえばマリーズは過去のロックに縛られるだけでなく、現在までに構築されてきたすべてのロックを通過し、その上で原点回帰し再構築してブルースを鳴らしているのだから非常に高度である。だがそれは彼らのオリジナリティではなく、Jロックの麒麟児「忌野清志郎」の見せてきた世界、それそのものである。


だから結局は清志郎の模倣と言ってしまえばそれで終わりなのかもしれない。しかし、日本において唯一無二であった清志郎の精神性を未来につないでいくということだけでも価値がある。と、そんな気休め程度の低い評価では志磨遼平は満足しないだろう。だからこそブルースやフォークと「BABYDOLL」や「すてきなモリー」といった現代ロックが同次元に存在しているのだと思う。


彼らの進んでいく道は険しい。そしてその道の続く先に見える「忌野清志郎」という峰のなんと気高く、なんと雄々しいことか。しかしそれを無視して彼らは前に進むことはできないし、挑戦をやめてしまえば彼らの存在価値は無に等しくなる。その山脈を越えることができる日はいつになることか。このアルバムを聴いてその日はそんなに遠い先のことではない、そんな気がした。