「椎名林檎」とは?そこから始めなくてはなるまい
彼女はデビュー当時から今に至ってもそのルックスばかりが目立ってしまっている。もちろん彼女があのルックスを持っていなければこんなに売れることはなかっただろうし、売れるためにはそれを利用するのが一っ晩であったに違いない。だが、それだけで彼女が好きだという奴は死んでしまえ、とここらから罵倒してやりたい。ていうか、してやる。かかってこい。
椎名林檎とは?彼女はJ-POP界という戦場を駆るヴァルキュリアである。
彼女のでデビューシングル『幸福論』から2nd『勝訴ストリップ』までの期間、彼女が協調してきたのは「ストイックさ」と「歪み」である。ヴォコーダーを多用した聞こえづらい歌声やギターのひずみ、それらをそのまま録音し、それでいてストリングスやピアノ中心の曲やシンセを使ったドリームポップもある。要はしっちゃかめっちゃかのてんこ盛りなのである。ただ、そうすることによってそれまでのJ-POP界では受け入れられるはずの無い音を鳴らし、現代のJ-POPシーンに宣戦布告を行ったのである。そして、これは成功する。
その後、『唄ひ手冥利』で自らの音楽性を構築するにいたった楽曲を発表することで自身を丸裸にし、3rd『カルキザーメンクリノハナ』というそれまでの2つのアルバムとは違うピアノ中心の楽曲集を発表し、その内に秘める新たなダークな面をさらし、椎名林檎としての第1章に幕を下ろした。
そうして始まったのが、東京事変である。それまで独力で戦い続けてきたヴァルキュリアがその途中でヴァルハラに迎えあげた最高の戦士たちとともに作りあげた新たなる軍団によってさらに強力な猛攻を仕掛けよう、として結成されたスーパーバンドである。そしてその力は1stシングル『群青日和』によって証明されたといって過言ではない。
ただ、2nd『大人』の発表前にその彼女らに変化が起こってしまう。バンドメンバーのうち2人が変わってしまったのだ。もちろん、新たなメンバーの演奏力がひどいというわけではないが、椎名林檎の考えていた東京事変と実際のそれの乖離が起こってしまう。そのことによって彼らの手にした力は「東京事変」から「椎名林檎」そのもののところまで落ちてしまう。
この変化、というか危機に対し彼女がどう対処したのか。東京事変という5つの歯車によってなる精密機械からその中心である自らの歯車を引っこ抜いたのである。ある意味自殺行為とも思えるこの試みによって、それまで椎名林檎のみに向いていた4人のバンドメンバーの眼をそれぞれ自分自身と他のメンバーに向け、さらに受動体であったかれらの姿勢を能動体に変化させることで、バンドとしての底あげに成功し、さらに最高傑作の3rd『娯楽』を製作するにいたった。
さらに東京事変と並行して、斎藤ネコとのコラボや映画『さくらん』の楽曲担当、さらに4枚目のソロアルバム『三文ゴシップ』などによって椎名林檎自身も着実かつ確実に自らの力をより堅固なものへと成長させていく。そしてその力を見事に表現しきったのが、昨年末のあのシングル『能動的3分間』である。その素晴らしさは言わずもがな、である。
そして今月24日彼女らの最新アルバム『スポーツ』が発表される。本当に期待している一枚である。だが、その期待を飛び越してくれるとの確信もある。今年一番のアルバムがもう出てしまうかもしれない。必聴間違いなし。