妄想blです。
お嫌いな方はスルーで。
スマホの画面で時間を確認して、ちょっと焦ってLINEのメッセージを送る。
いつもよりほんの少し遅くなった退社時間。
帰り間際に渡された書類の処理に手間取ってしまった。
『今から向かうから。遅くなってごめんね。』
とりあえず早歩きで駐車場に向かって、乗り込んだ車の中で急いでメッセージを送る。
シートベルトをしてエンジンを掛けるのとほぼ同時に、スーツの内ポケットに仕舞ったスマホがブルルと震える。
急いで確認すると、二宮くんからの返事だった。
『自習室で勉強してるんで、慌てなくて大丈夫ですよ。気を付けて。』
最後に一言に、何だか胸の奥があったかくなる。
こんな感覚は久しぶりで、だからこそ急いで向かいたい気持ちを抑えて、いつもどおりの速度で図書館に向かった。
駐車場から自販機まで歩く間に「着いたよ」ってLINEを入れて、ベンチに座る。
何となく、自習室の前まで行くのは気が引けた。
そこを利用する理由が自分には無いから、何だか邪魔してしまうような気がしたからだ。
急いで歩いたからなのか、ちょっといつもより心臓が早い気がする。
落ち着け、落ち着け。
そう頭の中で繰り返して、息を大きく吐いた。
向こうから、制服姿の二宮くんが歩いて来るのが見えて、立ち上がった。
「松本さん!」
この前と同じ、少しはにかんだ笑顔で俺の名前を呼ぶ二宮くんに、何だかこっちが恥ずかしくなる。
「遅くなってごめんね。」
「大丈夫です、宿題してたし。」
えへへって笑う顔は、やっぱりまだ幼さが見える。
それが可愛くて、ポケットから小銭を取り出した。
「ジュース、どれがいい?」
「んー...じゃあ...。」
さすがに三回目ともなると、彼がどれを押すのか分かって、先に押した。
「コレだろ?」
「ふふ、です。ありがとうございます。」
この前と同じように、彼の手にジュースを渡し、自分もコーヒーのボタンを押した。
「二宮くんは、これ読んだ?」
「読みました。面白かったですよ。」
手渡された紙袋の中の本を覗き込みながら、彼の言う面白いがどんな内容なのか
すごく気になった。
「映画は?見る予定?」
「行きたいなぁとは思ってます。」
「じゃあさ、一緒に行く?」
「え?マジっすか?!」
声のトーンが一気に上がった事が、俺の誘いに乗ってくれるって確証になった。
「うん、本借りたお礼じゃないけど。どう?」
「嬉しい!行きます!!」
嬉しそうな顔で笑う二宮くんに、こっちまで嬉しくなる。
「だけど、俺が読み終わるまで少し時間頂戴ね。」
「いつでもいいですよ!ゆっくり読んでくださいね。」
絶対面白いですから!ってお墨付きをもらって、その内容への期待値が上がる。
それと同じくらい、一緒に映画に行くって約束が出来た事が、どうしてだか嬉しく思えた。
何だか、懐かしかった。
自分の学生時代を思い出して、それと彼を比べて、何だかとても
彼が、可愛らしいと思えた。