妄想blです。
お嫌いな方はスルーで。
side N
次の日曜、また図書館に向かった。
借りた本、読み終わったし。
特別予定があるわけじゃないし。
言い訳みたいな言葉を並べたのは、たぶん期待してる自分を自覚してるから。
もしかしたら、また会えるかな?
そんな、僅かな期待。
だけど、それが叶わなかった時の為の言い訳。
いつもの場所に自転車を停めて、風で少し乱れた髪をガラス窓を鏡代わりにして手で整える。
少しだけ、ドキドキしてる。
ふぅって、ひとつ息を吐いて
入口の自動ドアをくぐった。
ゆっくりと館内を歩いて、この前の場所に差し掛かる。
背の高い書棚を抜けたその場所。
あの人がいた、その場所。
だけど、そこに居たのは全然違う人で
一瞬止まりかけた足を更に前に出してその通路を横切った。
奥にある大きなテーブルまで歩いて、ぐるりと見渡したけど
やっぱりあの人はいない。
...やっぱり、そうだよな。
それでも何となく足を止める事も出来なくて、そのまま壁に沿ってゆっくりと歩いた。
窓際のソファ、ビデオコーナー、インターネットコーナー。
いつもは行かない雑誌が置いてあるコーナーも。
だけど、やっぱりその人の姿はどこにも無かった。
自転車を漕ぎながら
何度も頭の中で繰り返した言い訳を
もう一度繰り返す。
本を返しに来ただけだ。
特別予定がなかっただけだ。
だから、とりあえず図書館に来た。
ただそれだけだ。
繰り返しながら、それでもほんの少し気持ちが萎むのが自分でもわかった。