妄想blです。
お嫌いな方はスルーで。
side J
かずと別れるいつもの交差点、
それじゃまたねって言おうとして
かずの顔をみたら
何かちょっと、いつも以上に目が潤んでて。
きゅって唇を引き結んでいて。
「・・・どした?」
思わず聞いた。
かずが視線を落として、そっと俺の学ランの裾を握る。
「あのね、この前オレ・・・告られたんだ。」
それはきっと、あの始業式の日の事だ。
「その時に言われたんだ。
『いつも』は『いつまでも』じゃないって。
それってつまりさ、さっきじゅんくんが言った、目の前の事を頑張るって事と同じだと、思うんだ。」
「・・・うん、そうだな。」
「でね、オレはちゃんとじゅんくんに、その時その時で、自分の気持ちを伝えられてたかなって思った。
言わなくてもわかってくれるって、思ってなかったかなって。」
かずの俺への気持ちはちゃんと伝わってる。
そう、断言できる。
だけど、きっとかずは俺に話を聞いて欲しいんだろうと思って敢えて黙ったまま聞いてた。
「だから・・・ね、今日の追試でじゅんくんが、自分の納得できる結果を出せたことが・・・すっごく嬉しい!!」
とびきりの笑顔で嬉しさを伝えてくれるかずが、すごく可愛くて。
本当はそのまま抱きしめたかった。
俺の事をこうやって一緒に喜んでくれる。
まるで自分の事みたいに喜んでくれる。
こんなに誰かを大事だって思った事は、かず以外でいないかもしれない。
だからこそ、かずを傷付けるような事はしちゃいけないんだ。
母さんの言葉が改めて胸に沁みる。
こうゆう事だって、ちゃんと実感してわかる。
「かず、ありがとう。」
自分の為だけど、それはきっとかずを守る事に繋がる。
かずとの未来に繋がる。
今回のテストは、まだあんまり想像出来ていなかった未来を
ほんの少しだけ明るくしてくれた。
帰り着いて、まずは母さんにただいまって声を掛ける。
「おかえり。おやつ食べる?」
いつもと変わらない母さんに、カバンの中から追試の答案用紙を取り出す。
「追試、終わった。」
差し出した答案用紙を受け取った母さんは、にっこりと笑った。
「頑張ったね。」
その言葉に、ちょっとテレくさくなるけど。
自分の為だけじゃなく、大事な人の為に頑張るって事を改めて教えてくれた母さんに、ちゃんと胸を張れる結果を出せた事が嬉しかった。
「ママは、二人が頑張ってるのをわかってる。だからこそ、結果を出せる二人でいてほしいの。そしたらきっと、二人の事をわかってくれる人は増えると思うから。」
「うん、そうだよね。」
「潤には、かずくんのせいで・・・じゃなくて、かずくんがいたからって思って欲しいし、周りの人にも同じように思ってほしい。
まぁ、そこまで望むのは親のエゴかもしれないけどね。」
そう言って笑う母さん。
でも、その思いはちゃんと理解できる。
世界は、俺ら二人だけで回ってるんじゃない。
たくさんの人と関わって、回っていく。
だから、わかる人にだけ伝わればいいって気持ちだけじゃダメなんだ。
今までたくさん、かずに「好き」って気持ちを伝えてきたけど
これからはもっと違う意味で、もっとたくさんの意味を込めて「好き」って言えるような気がする。
「母さん、ありがとう。」
「うふふ。どういたしまして。
あー!でも、ホント安心したぁ。」
赤点取った事で、余計な心配を掛けさせてしまってたんだよな。
「ごめん、次はもう無いから。」
「これなら、かずくんお嫁さんに来てくれるかな?」
「・・・は?何言ってんの?!」
「だーって!潤がおバカさんだと、かずくんが嫌になっちゃうかもしれないでしょ?!
ママ、それだけは絶対いやなの!
いつかかずくんが、潤のお嫁さんになってくれるのが、ママの夢なんだもん♡」
・・・やっぱりこの人は、ちょっと変わってる。
姉ちゃんとアイドルにキャーキャー言ってる時と同じ顔して、とんでもない事を言ってる。
だけど。
正直、ほっとしたのは俺も同じだから、ある意味やっぱり親子なのかもしれないな。