うたかたの中で宵待つ。37 LAST | 潤いと和み。

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大丈夫な方のみ、お進みください♡



妄想blです。








お嫌いな方はスルーで。









何を書けばいいのか、わからない。
いきなり会って話してみたいなんて送っても
きっとイタズラだと思われるだろう。

なるべく怪しまれないように。

そう考えて、デザイナーである自分の職業を記してから、同じ街に住んでいること、ホームページを見せていただいた事、そして写真の事で話がしたい事を綴った。

あくまで、ビジネスライクに。

何度も何度も書いた文章を読み返して。
失礼のないように。
怪しまれないように。

内容はあっさりとしたものだったけど、
内心はまるで初めてのラブレターを書くみたいな心境。

キーボードを叩く指は僅かに震えてた。

それでも、その震える指で送信ボタンをクリックする。

どうか、どうか。
返事が来ますように。

ほんの少しの酒の勢いで書いたそのラブレターは

一瞬で送信ボックスに消えた。






それから数日後、メールの受信ボックスの中に
そのアドレスを見つけた。
まるで中学生みたいにドキドキして送ったメールの宛先は既に覚えてしまっていて
それと同じアルファベットの羅列を見つけた瞬間、鼓動が早くなる。


どんな返事が書いてあるのか。


もしかしたら、俺の望みは打ち砕かれてしまう内容かもしれない。
そう思うと、開けるのが怖い。

怖いけど、返事を貰えた事が嬉しくて。

複雑な気持ちを振り払うみたいにして、
そのメールを開けた。




挨拶の文字から始まったその返事は
意外にも、会いたいという俺の願いを聞き入れてくれる内容だった。
ただ、その文章からは気乗りしているのかしていないのかは読み取れなかった。







平日の昼間。
あの海岸近くのカフェで彼と待ち合わせた。

腕時計で時間を確かめれば、
いつもと同じように家からの道を歩いてきたのに、予定よりも早く着きそうな時間を指していた。

緊張、してる。
そのせいか、きっといつもより早足になってたんだろう。
だけど、相手を待たせてしまうより少しは気分的に楽だから、もう目の前にあるその店に真っ直ぐ足を運んだ。


木製のドアの取っ手を握り、ひとつ深呼吸をする。

会いたいと伝えた気持ちは変わらない。
だけど、会って何を話せばいい?
ニノに繋がる何かが得られる確証は、ない。

それでも、あの切り取られた風景が、あまりにもニノとの最後の記憶と重なっていて
もしかしたらっていう小さな期待が消えない。

水族館でニノを探したあの時みたいに
荒れた海岸でニノを探したあの時みたいに

ニノに繋がる欠片さえも手にする事は出来ないかもしれない。

それでも、大野さんの言葉が背中を押す。


「気が済むまで探せばいい。」


もし、何ひとつニノの欠片を手にする事が出来なくても。
選択肢がひとつ狭まるだけの事だ。

自分にそう言い聞かせて、もう一度息を大きく吸って
その木製のドアを引いた。





店員さんの声が店内に響くなか、
そう広くはないその中をグルリと見渡す。


疎らなお客さんの中で、窓際のテーブル席に
こちらに背を向けて座るその人を見つけた。

少し猫背な華奢な肩。
黒い髪と、その隙間から見える耳。
細い首。

その後ろ姿が、俺の中の記憶と
ひとつひとつ、合わさっていく。

それはまるで、欠けたジグソーパズルのピースが嵌まるよう。

その髪に触れた時の感触を覚えている。
その耳が赤くなるあの照れた表情を覚えている。

華奢な肩は、抱き締めると思った以上に細い。
その首筋に顔を埋めれば、鼻をくすぐるような甘い匂いがする事も。

全部、全部。

昨日の事のように、覚えてる。

そこに座っていたのは、
ずっとずっと探していた
ニノそのものだった。


一歩一歩近づいて。


こんにちわって言おうと思っていたのに
初めましてってまずは名刺を渡そうと頭の中でシュミレーショしていたのに。

そんなものは、全部吹っ飛んだ。

触れたい。
抱きしめたい。
きっとその感触は、重みは、
あの日感じたものと同じはず。

確証がないのに、俺の中の何かが
そう思わせる。

触れたくて堪らなくて、伸びそうになる手を必死で押しとどめる。

そうして真っ白になった頭で、最初に出た言葉は


「・・・ニノ。」

愛しい人の名前だった。


ピクンとひとつ体を震わせたその人は、ゆっくりとこちらを振り返る。




ずっとずっと、探してた。

やっと、見つけた。


ほんの少しだけ上がった広角、傾げるような仕草で、目の前の人が言った。



「じゅん?」



薄い唇がそっと開いて、そこから溢れた最初のその言葉。


俺は、その言葉を



きっと一生忘れない。










「うたかたの中で宵待つ。」
おしまい♡











sideニノ
「宵待つはうたかたの中で。」
につづく。