妄想blです。
お嫌いな方はスルーで。
スマホの画面を見つめながら、それが鳴るのを待っていると。
デジタル表示の時計が6時を表示してすぐ、ピンコンって電子音が鳴った。
メッセージアプリを開けば、待ち遠しかったじゅんくんからのメッセージ。
『今から出るから。待ってて。』
返事を打とうとして、何度も打ち間違える。
震える自分の指がもどかしくて。
『気を付けてね。』
早く返信したかったのに、結局たったそれだけしか打てなかった。
そんな短いやり取りをして、スマホとカバンを握り締めて下に降りる。
「母ちゃん、そろそろじゅんくん来るって。」
「かずは準備出来てるの?」
「・・・うん。」
さっきまではあんなに待ち遠しかったのに、今は緊張で心臓が壊れそう。
だから、落ち着かせようと忘れ物がないかもう一度確認した。
財布、タオルハンカチ、スマホ。
たったそれだけの物しか入れてないボディバッグを、朝から何度確認しただろう。
そんな事でもやってないと、緊張と不安で変になりそうだった。
ボディバッグを肩から掛けて、玄関の上がり口に座る。
インターフォンが鳴ったらすぐに出れるように。
落ち着かなく投げ出した足をパタパタさせていると、
『ピンポーン』
じゅんくんだ!
一呼吸おいて、ゆっくり玄関を開けた。
「かず。お待たせ。」
「大丈夫。待ってないよ。」
首筋に滲む汗で、きっと急いで来てくれたんだってわかる。
「じゅんくん、上がって少し涼んで行く?」
「いや、時間もったいないから行こう。」
「ん。母ちゃーん!じゅんくん来たよ!」
奥のリビングに向かって叫べば、パタパタとスリッパを鳴らして母ちゃんが出てきた。
「じゅんくん、こんばんわ。」
「おばさん、行ってきます。ちゃんとかずの事送ってくるから。心配しないで。」
「はい♡お願いね。楽しんでおいでね♡」
2人で行ってきますって言って、玄関を出た。
いつものようにじゅんくんの自転車に二人乗りして。
「かず、何から食べたい?」
「わかんないからじゅんくんに任せる!」
「じゃあ、オレのお勧めぜーんぶ制覇な!」
「そんなにたくさんお勧めあるの?」
「あるよ!」
その場所で食べるからこそ美味いんだよって言うじゅんくん。
どこで何を食べたって、じゅんくんと一緒なら絶対美味しいはずだ。
そう思ったけど、言えなくて。
心の中だけで呟いた。
暫く走ると、浴衣を着た女の子や甚平姿のちっちゃい子を連れた家族連れを追い越す。
もうすぐ。
花火が上がる大きな川の河川敷までもうあと少しだ。