妄想blです。
お嫌いな方はスルーで。
「にのがバイトに入る日は、お客さんが多いんだよね。
不定期でしか入らないのに、みんなどうやって把握してんだろ?」
翔さんがグラスを並べながら呟く。
そうなんだ。
ニノは、モテる。
女からだけじゃなく、男からも。
華奢な体と色白で可愛いからなのか、
人当たりが良くて会話が楽しいからなのか。
何にしても、ニノ目当てのお客さんは増えつつある。
「さて。そろそろ店に戻らなきゃ。コーヒーご馳走様でした。」
そう言って立ち上がるニノ。
「翔くん、オレ瓶運ぶの手伝ってくるね。」
「ああ、お願い。じゃあ、にの週末よろしくね。」
「りょーかいっ。じゃね!」
片手に瓶の入ったケースを持って、
ちょっと重たいドアを開けてニノが出るのを待つ。
車までの距離はほんのわずか。
その距離を二人前後に並んで歩く。
前を歩くニノは、 少し猫背っぽく背中を丸めてポケットに片手を突っ込み、
反対の手では車のキーをくるくると回す。
車の後ろのハッチを開けてもらい、
持っていた瓶の入ったケースを仕舞う。
「潤くん、今日はお店終わって予定あり?」
そのセリフにドキっとする。
「今日は何もないよ。」
何でもない風を装って答えた。
「じゃあ、コレ。」
俯きながら差し出した、握られた手。
まん丸でハンバーグみたいなその手に握られたもの。
その仕草と差し出された手だけで、ソレだとわかる。
「行く前に連絡するから。」
そう言って、手の中のモノを受け取って
ポケットに入れた。
じゃあねってはにかむように笑うニノを見送って
店に戻る。
オレのエプロンのポケットの中で、歩くのと同じ動きでチャリっと鳴った。
それは、ニノの部屋のキーだった。