舌を頼りに 30年間食べもの絵日記を描き続けている 雑食性サラリーマンです。
食記・九州編より⑩・美美
福岡へ行って思ったことはコーヒーが高いということだった。当時で一杯500円くらいする店が多かったのだ。東京でならわかるが、ラーメン一杯300円の街での500円はずいぶんと高く感じたものだ。確かにきちんとサイフォンで淹れる店が多かったが、だからと言って納得できるものでもない、高いコーヒーだなあと思いながらいつも飲んでいた。
そんな中一杯800円のコーヒーを出す店があった。山本益弘の「考える舌」の最終回にイル・ド・フランスとともに紹介されていた珈琲美美だ。そしてその800円のコーヒーが800円以上の価値があると思わせるだけのものだったのだから、福岡というのもすごいところだ。
当時8の付く日だけに出していたバニー・マタルというのは、要するにモカ種のコーヒーなのだが、酸味と苦みと甘味が絶妙で、あんなコーヒーは美美以外で飲んだことはない。店内は四方の壁にいろいろな店主の書いた能書きが掲示してあり、ふつうはこういうのは鬱陶しいのだが、この店の能書きは結構ためになった。モカというのがイエメンの港町の名前だということを私に教えてくれたのもこの店の能書きである。
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