青はこれを藍より取りて、藍よりも青し | N360の部屋

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昭和の名車(笑)NⅢ360を楽しんでます。

モノづくりを生業として来ましたが好きな言葉があります。

漢文ですが“ 青取之於藍、而青於”ですが直訳すると表題の“ 青はこれを藍より取りて、藍よりも青し”となります。

私のモノづくりに対する基本的なスタンスです。

そんな気持ちの始まりの回顧録です……


幸いにも開発から関わる事の出来た世界初のCDプレイヤーが1982年10月1日に発売され、カタログ標準価格は¥168,000でした。

今では考えられない価格ですが実際に掛かったコストを考えると仕方ないかも知れません。

コンパクトディスク(CD)ですが従来のレコード盤と同様に溝(トラック)があり音楽データが記録されている形状(ピット)があります。


しかしトラックピッチは1.2μmでピット幅は0.5μmと勿論目では見えません。

こんな小さなピットを読む為のレコード盤の針の代わりを果たしたのが光学式のピックアップです。

波長780nmの赤外線レーザーを対物レンズでディスク上で2μmに収束してピット信号を読取ります。
しかし回転するディスクは偏心、面ブレしているのでトラックキング/フォーカス方向に対物レンズを動かすサーボ制御にて常にディスク上に焦点を結んで読取らなくてはいけません。
そんな緻密な動作を成し遂げるのには構成部品の高い精度が必要でした。
対物レンズも2μmの収束を得るためには一枚の球面レンズでは達成出来ず、2枚のレンズを接着し更にもう一つのレンズを組合せた2郡3枚構成の球面レンズが必要でした。
光学ピックアップ本体も構成部品の位置精度を保証する為にはアルミ/真鍮等の金属材質で尚且つ切削加工は必須で、レーザー光線をディスクに収束させ戻って来た信号を読み出す為には構成部品位置のミクロンレベルの調整(アライメント)が必要です。
したがって光学ピックアップ原価は信じられない程の金額で、それを搭載したCDプレイヤーの価格も当時は妥当だと思います。
しかし当然市場のコストダウンの要求が高まるり、対物レンズも2郡3毎構成の球面ガラスレンズから1枚の非球面樹脂レンズが開発され、本体材質も金属材切削から亜鉛ダイキャスト→樹脂成型へと徐々にコストダウンを達成して来ました。
正に藍から取り出した青き技術を研ぎ澄まし、藍よりもさらに青き技術を作り出して来ました。


趣味の延長で初めた3Dプリントですがこれでも”藍よりも青し物“を作りたいと頑張ってます。

新商品の“HondaS500”エンブレムが完成です。

破損してしまった当時物から採寸し全くの0から3Dデータを作成し、当時の劣化しやすいアンチモンに代わりステンレスにてプリントしました。

耐久性や比較的滑らかな表面状態も確立出来ましたがより良い耐久性/仕上げを達成する為、下地仕上げに研磨/銅メッキを施し電解メッキにて仕上げまし。

はっきり行って当時物や出来のいまいちの純正リプロ品を大幅に上回った物が出来たと自負できます。


実はこの完成の瞬間が頑張って来た何よりのご褒美です。

ある意味麻薬ですね。