ざこねぐら -2ページ目

ざこねぐら

ゆっくり枯れていく

 

そこは白い部屋だった。

壁と床と天井の境目が分からなくなるような、綺麗で白い部屋だった。

とてもとても美しいと思ったし、きっと私は死んでここはあの世だと思った。

 

目の前には本棚があった。

美しい白の中に無粋な、古びた木製の本棚だ。

 

無作為に適当な本を1つとって、開いてみる。

 

白紙であった。

 

きっとそこには何か書かれているのだろうと思うけれど、

いやそこに何か書かれていることは知っているはずだけれど、

確かにその本はどのページも白紙であった。

 

「返事をして」

 

耳元で女のようなか細い声が聞こえたような気がした。

ひどく耳障りで頭痛を覚えた。

 

「お願いします、返事をしてください。お願いします」

 

誰が返事をしてやるものかと、違う本を手にとって、パラパラと流し読んだ。

やはり白紙であった。

 

「このままでは私は死んでしまうのです。お願いです。返事をしてください」

 

死んでしまえばいいのだ、お前など。

死んでしまえばいいのだ。

誰かも分からぬ声に、仇のように念を送った。

そうだ死んでしまえ、ここは私の部屋だ、私の部屋だ。

 

次第に声は遠のいた。

気がつけば本棚を全て読み終えていた。

どれもこれも、白紙であった。

 

 

蜜蜂の羽音のような低く耳障りな音で、いつも不快な朝に気付く。

 

音の発信源である携帯のアラームを止めて、痒くもない頭を掻き毟りながら、

伸びた髪の毛を手櫛で整える。

 

何か、とても怖い夢を見ていた気がする。

 

睡眠時間を数えてみても、この脳みその倦怠感は説明がつかない。

そう、夢見が悪かったのだ、覚えてはいないけれど。

 

誰に見せるわけでもないのに、大げさに眉間に皺を寄せて、ベッドから這出る。

脱いだ寝巻きをそのまま洗濯機へ入れて、浴室に入る。

熱めのシャワーを目を閉じたまま浴びて、頭を少しずつ起こしていく。

 

今日は、学校だったか、仕事だったか。

 

学生の身分を手放してからもう何年と経つというのに、朝の回らない頭は何故か

体を学校へ向けさせようとする。

 

仕事だ、馬鹿者。

 

口の中で、声には出さずに呟いてみても、脳みそはどうも理解してくれないらしい。

 

それはフラッシュバックに似ている。

今でもあの場所へ行けば自分を受け入れてくれるのではないかと、幸せな記憶が、

私の人生の邪魔をする。

 

過去の幸福が現在を不幸にするのなら、人間は幸福になり続けなければいけない。

 

そんな人生は決して幸福ではないだろうと、

なんだ結局人間は真に幸福にはなれないのだと、

 

くだらない結論が出たところで目を開けた。

無駄に白い肌が痛々しいほど赤くなった頃、ようやくシャワーの蛇口を捻り湯を止めた。

 

私が唯一、飽きずに続けている朝の日課。

息をするように自分を不幸にしたてようとする脳みそとの戦いだった。

 

今日も変わらず、憂鬱な一日のようだ。

 

⑧でシナリオクリアということで以上終了とします。

一番最初に考えたシンプルな探索→戦闘のシナリオでした。

 

ただ一点、コンセプトがあって、「NPCの好感度上げすぎると食われて死ぬ」

 

というものでした。

 

最後の部屋に入る前に好感度でシナリオ分岐。

・好感度が一定以下=「誰か手を握ってください」

・好感度が一定以上(かつ一番高い探索者)=「〇〇さん手を握ってください」

 

手を握らなければ、そのまま普通に最後の部屋でボス戦。

好感度一定以下の人と握っていると、その人が拘束(組み付き状態)でボス戦

好感度一致以上の人と握っていると、その人以外の探索者は部屋に入った瞬間、

元の世界の廃墟と化した校舎へ。

手を握った人はゆっくりヨツハちゃんに食べられながらゲームクリア。

 

 

 

探索中に生徒の日記などから、

「一時期からアユリの様子がおかしくなった」という情報を探索者に与えて、

 

アユリ=敵

 

というミスリードさせて、実際はただの可哀そうな第一被害者というオチ。

 

ちなみにヨツハちゃんはどう足掻いても、食べ過ぎで自我を完全に蜘蛛にとられてるので、

死に際だろうが正気に戻さずに狂ったまま退場していただて、

探索者はゲームクリアしても”誰も救えなかった”絶望感だけ味わっていただこうとか。

 

 

そんな感じの、まぁ修正したい箇所はいっぱいあるけど、これが一番最初のシナリオ

 

の、ボツ案でした。