「ここが最後の部屋……っていうか、行き止まりのどん詰まりの終着点さね」
校舎3階、廊下の一番奥の教室の扉の前で、探索者たちは息を整えていた。
閉じ込められた校舎は、本来の世界の校舎と作りは同じようだった。
空間的な軸がずらされているよりも、時間的な軸がずらされているのかもしれない。
その証拠に、新しさこそないものの、放置され老朽化したような、廃墟染みた
空気は、探索中にはあまり感じなかった。
有益な情報は、それなりに拾い上げてきた。
おそらく、ヨツハと名乗った私の後ろに控えている少女は、この学校に在学していた。
敵か、味方かは、分からない。
薮蛇は避けたほうがよい、と私以外に気付いた人もいるだろうが、誰も彼女を問いただす
ようなことはしなかった。
「準備がよければ、入りましょうか。もう完全にラスボス戦って感じですけど」
探索者の1人が、全員を見渡し、それぞれの状態を確認する。
体力の消耗こそあるものの、全員正気を保ち、応急処置も済ませ、
”一戦交える”準備はいいようだった。
「あの……すみません」
ヨツハが弱弱しく呟く。
見れば、自分の身体を抱くようにして、身を震わせている。
「なんだか、とても、怖くて……誰か、手を繋いでくださいませんか?」
てを、つなぐ?
敵か味方か、判別つかないやつと?
逃げ場のない場所で?
コイツハナニヲイッテイルンダ?
「はいはい!ヨツハちゃーん!俺でよければ繋ぐよー!むしろ繋いでー!」
探索者の1人のお調子者が、ヨツハの手をとってニコニコしている。
ヨツハは始め面食らったものの、安心したように、満足そうに微笑みを浮かべた。
「……準備、できたな。いくぞ」
ため息をついてから、扉に手をかけた。
願わくば、お調子者に幸あれ。