中島みゆき3 | Review

Review

エンターテイメント評論(本、映像、音楽、お笑い…)



歌のアルバムというよりは終始女優として演じ続ける「短編映画集」のような出来。4作目にしてすでに完成形に達している。発売当時初めて聞いた人は実験的試み満載に衝撃を受けたのではないか。



冒頭いきなり語りから入る(「元気ですか」)。絶望的な科白の羅列の中、自然とBGMが始まり、突然途切れる、そして再開してから一気に語りもクライマックスを迎え、そのまま「れーーーぇいーこ!」(怜子)へと突入。ここの入りは何回聴いてもグッとくる。


「海鳴り」…コード4つのシンプルなアルペジオが続くが、後半かぶせてくるギターがメロディアスでじんわりくる。


「化粧」…ふられた女のすがりつき具合が真に迫っており、聞いてるこちらももらい泣きしてしまう。前奏・後奏で唸るエレキギターがかっこいい。(谷川俊太郎に「演技なの?それとも本当に泣いてたの?」と聞かれて「教えてあげないの」と答えていた…)


ミルク32…お芝居の一場面というか一つのシナリオとして完結している(満島ひかりも「女優」としてなら歌える、と言っていた)


「おまえの家」…雨の音の演出から、ギターの前奏、けだるげな入りへ。途中のコーラスが本当に美しく、自分でもやってみたくて高校生のときに自分の声を録音し、人前でピアノ弾き語りをしたことがある(若気の至り…)。


「世情」…3年B組金八先生の「卒業式前の暴力」でBGMとして使われ、我々の世代のほぼほぼ全員が知っている曲。ギターの執拗なアルペジオから男性コーラスが入りじわじわと盛り上がっていくと、おもむろに地獄の底から(そんな感じがする)「世の中は〜」と声が聞こえてきて、背中がゾクーッとする。しかし改めて歌詞を聞いてみるとこれは一体どういうメッセージソングなのか、世の中に流されていく大衆批判なのか、世論を操作するマスコミ批判なのか、謎…