これぞ司馬遼太郎の到達点。文句なしのマイベスト。
写真は父から譲り受けた初版本。再読のたび発見がある。
主役の二人を中心に話が進むが、中身は司馬遼太郎お得意の群像劇。出てくる登場人物がみな生き生きとしており、それぞれの数奇な人生が語られる。漢帝国成立後生きながらえた人でも、その後の悲劇があったりと油断できない。
出来は長編だが、実際の中身は短編をつなぎ合わせたような作り。司馬遼太郎ってやっぱり短編の名手だなと改めて認識させられる。
本宮ひろ志も「赤龍王」で遠慮なくパクっているが、魅力的なエピソードが満載。冒頭から痺れる「始皇帝の帰還」、張良登場シーン、中盤のクライマックス「鴻門の会」、韓信登用シーン、暗躍した家来のエピソード「陳平の毒」「紀信の悪口癖」、終盤広武山での両雄対決シーン、舌先三寸で命を賭ける弁士たち、など挙げればキリがないが…
人間が最後に頼るものは食…何とも俗っぽいながら根源的なテーマが全編に通じている。