泡坂妻夫0 | Review

Review

エンターテイメント評論(本、映像、音楽、お笑い…)



まだ全著作の読破に至っていないが、これまで読んだ作品にハズレがなく、まさしく「巨人」といえる作家。


有栖川有栖も「ミステリ国の人々」の中で並み居る強豪推理作家の中で、泡坂にだけ特別に二コマを割いている(実はこれを読んで本格的に泡坂を読み始めた)。


「紋章上絵師」という本業があり、なおかつセミプロとしてのマジシャンという顔を持っていた作家だけに、生活のために書くという職業作家というよりは、本当に自分の書きたいものだけを書くというか、ある種の職人、芸術家的な面が垣間見える。


トリック・アイデアを完成させるのに年単位のスパンで伏線を張ってある作品群もあり、「これに気づくかな?」と読者への挑戦ともいえる埋め込まれた遊び心には作家のある種の執念というか、空恐ろしくも感じたりもする。


故人であるため、これ以上新たな作品は生まれないので、泡坂を超える作品を書いてやる、と世の推理作家達は常に挑んでいるのではないか(米澤穂信とか伊坂幸太郎にはその気合いを感じる)。


このムック本にも並み居る作家(法月綸太郎、恩田陸、綾辻行人、北村薫)が賛辞を寄せている。