横溝はまずはこれから。
何と言っても金田一耕助初登場作品である。岡山の旧家という舞台装置もバッチリ。
初読のとき(中学生くらい?)は「意外な犯人」という一点に驚愕したが、最近改めて再読したところ、海外ミステリの蘊蓄を散りばめてみたり、横溝自身が編集を務めていた「新青年」で書いていた作家の名前を並べてみたりと遊び心満載で、「探偵小説」というものに対するリスペクトというか愛情が溢れ出ている。
戦争が終わり「さあこれからだ!」と作家一本でやっていこうという並々ならぬ決意、探偵小説の枠に留まらない一級品のエンターテイメントを作るぞ!という気概が伝わってくる。
表題作のみならず「黒猫亭事件」もいい。物語の骨格は何となく記憶にあったのだが、意外と複雑な話がさらりと書かれており無駄がない。必読。
