第9話:腐れ縁



土曜日の朝を迎える。

朝と言うよりももう完全に昼は過ぎている。

こんな平和な休日。

実に清々しい。
この勢いでもう一眠りしてやろう…
なんて事を考えてると、下から誰かの声が聞こえる。
確実に俺の…母親だ。

多分、俺を呼んでいる。

『陽平‼️陽平‼️いつまで寝てるの‼️荷物重たいんだから手伝ってー』

荷物…?
何か注文しただろうか??

だるい体を起こし、下に向かう。

すると玄関には、大きなボストンバッグを2個持った結が立っている。

不思議そうな顔で、その様子を見ていると、うちの母が一言。
『今日から結ちゃん、この家に住むから‼️』

俺は寝ぼけているのか、まだ夢の中なのか…

結は『陽ちゃん‼️今日からよろしくねね‼️』

俺はたった一言『二人して、つまらん冗談は、やめなさい』

すると母が間髪いれず
『冗談なんか言いません‼️まあーあれよ、サプライズってやつよ‼️』と言って重いカバンを渡される。

『いや、なんで…』力の入ってない声で言う俺。

すると結が『私のお母さんが、陽ちゃんのお母さんにアメリカに行く話をしたら、「女の子を一人にするのは危ないから、家においで」って言ってくれたの‼️』

確かに母親同士、非常に仲が良いが…

『俺は…認めない‼️‼️』とキッパリと言った。

すると母は『なに言ってるの‼️家主であるお父さんが賛成してるんだから、あんたに拒否権なし‼️‼️』と腕を組みながら言い放つ。

さすがに観念して、部屋まで荷物を運ぶ。

やはり、隣の部屋に住むらしい。

俺はその部屋に荷物を置き、無言で自分の部屋に入った。



数分経ち、部屋をノックする音が聞こえた。

『陽ちゃん…ちょっとだけ…いいかな…』と結がドア越しに言う。

『良いよ、入って』と結を部屋に招く。

結は『あのね、ちょっと聞いて…ホントはね、断ろうと思ってたの…だけど、せっかくの好意だからと思って…何日かしたらまた自分の家に戻るから…』と俯き加減で言う。

『いればいいじゃん…』俺はボソッと言った。

結は、驚いた表情でこちらを見る。

『まあーあれだ、一人だと何かと大変だろ…危ないし…まあー、うちの母親の出過ぎた真似に付き合ってやってくれ‼️』軽く笑いながら俺は言った。

結も笑顔を取り戻し、『陽ちゃん…ありがとう‼️‼️‼️』と言った。


こうして、結と、俺、そしてうちの家族との奇妙な共同生活が始まったのである。

-続−