ホフマン物語というのはちょっと変わったストーリーで、原作のドイツ・ロマン派の詩人E.T.A.ホフマンの小説は「怪奇小説」つまり「ホラー」のジャンルに入ると思う。私は昔は「どんな眼鏡をかければ人形が人に見えるんだ?」とか、「母親の亡霊が出てきて歌え歌えって言って狂ったように歌って死ぬなんてありえない!」とか思ってちょっと敬遠していた。ドミンゴやクラウスのDVDとかだいぶ前から持っているが何度も見ていなかった。

 

でも最近は一種のファンタジーとして捉えられるようになって、この世界観をどういう演出で表現しているのかとか、どのくらい本当に人形っぽく見えるかとか、面白がって見られるようになった。演劇的な要素の強いオペラと言うべきか。そういう点でこの作品はCDよりも映像か実際の舞台の方が楽しめると思う。

パリオペラ座のカーセン演出のホフマン物語は2002年の映像(シコフとターフェルが主演)が以前国内盤DVDでも出ていたのでそれをご覧になった方も多いだろう。パリオペラ座がストリーミング配信したのは2016年の再演だ。キャストは一新されているが、2002年の上演とそん色ない優れた上演だと思う。ヴァルガスはメットのボエームより合っていると感じた。彼はルックスがちょっとユーモラスなのでボエームだとちょっと暑苦しいというか厚かましい感じがしたのだが、ホフマンのようにちょっとふざけた役だと生き生きしている。ヤホのアントニアは適役でニクラウス(ミューズ)も好演。アントニアの母も2002年版より良いと私は思う。

演出は基本的に変わっていないようだ。METのミュージカル風の舞台に比べると相当クラシックで落ち着いている。幕の順番はオランピア→アントニア→ジュリエッタでMETと同じ。最近はこれで決まりのようだ。アントニアの幕は歌手が空のオケピットで歌っているが、この間オケはどこで演奏しているのだろう? 指揮者をどうやって見ているのだろう? 画質は2002年のDVDより数段良い。ぜひBlu-ray化してほしい。4/26まで下記サイトで全曲見られるのでぜひ多くの人に見てほしい
https://www.operadeparis.fr/en/season-19-20/opera/les-contes-dhoffmann

Musical direction: Philippe Jordan
Staging: Robert Carsen 
Ermonela Jaho, (アントニア)
Stéphanie D’Oustrac, (ミューズ、ニクラウス)
Nadine Koutcher,(オランピア)
Ramón Vargas(ホフマン)
Realized by: François Roussillon