ハイレゾリマスターで音質向上!
原典版を先取りした第九に注目!

 

 

 

 

 バーンスタイン派の方には申し訳ないが、すみません私はバーンスタイン党だったことは一度もありません。70年代からカラヤン党、81年のスカラ座の来日をテレビで観てクライバーもいいなと思うようになり、88年のボエームでクライバー教に改宗、その他チェリビダッケとテンシュテットにも心酔。故人ではなんと言ってもクナッパーツブッシュをこよなく愛するようになりました。

 そういう私もこの全集には一目置いていて、特に9番は優れた演奏だと思う。コロやジョーンズといった私のお気に入りが出ていることもあるが、第三楽章のファンファーレ(121小節)を楽譜通りスタッカートにしている点や、第四楽章でチェロの歓喜の主題にかぶるファゴット(116小節)を第一ファゴットのソロではなく第二ファゴットのパートも吹かていせる点は当時は極めて珍しく、原典版回帰の先駆けだったからだ。私はカラヤン盤を愛聴していたので、この演奏を最初に聴いた時は驚いて迷わずスコアを買いに行き、バーンスタインのほうが楽譜通りであることを知って驚いた。

 ところがバーンスタインは晩年の1989年の演奏(“Freude(歓喜)”を“Freiheit(自由)”に変更して歌わせたことで有名な演奏)では従来の慣用版に戻してしまいまった。どうせなら死ぬまで信念を持ってやってほしかったので私はとても残念に思った。どうやら原典回帰はバーンスタインの意向ではなく、オケかDGの意向だったようだ。

 何はともあれこの全集がブルーレイ・オーディオで、しかも192kHz/24bitの最新リマスターで聞けるようになったことを喜びたい。今回の音源は基本的なバランスは以前のCDと大きく変わっていない。マルチトラック音源からリミックスし直してあるという訳ではなさそうだが、でもマックルーアの録音に特有の弦がくすんで濁った感じはだいぶ改善されて音の抜けが良くなった。以前のCDをお持ちの方にもぜひお勧めする。アルバム型の限定盤と紙ケースでBOXに入った通常盤の2通りのパッケージが出ているが値段はほとんど変わらないようだ。

【Blu-ray Audio】
ベートーヴェン:
● 交響曲第1番ハ長調 Op.21
● 交響曲第2番ニ長調 Op.36
● 交響曲第3番変ホ長調 Op.55『英雄』
● 交響曲第4番変ロ長調 Op.60
● 交響曲第5番ハ短調 Op.67『運命』
● 交響曲第6番ヘ長調 Op.68『田園』
● 交響曲第7番イ長調 Op.92
● 交響曲第8番ヘ長調 Op.93
● 交響曲第9番ニ短調Op.125『合唱』

ギネス・ジョーンズ(ソプラノ)
ハンナ・シュヴァルツ(アルト)
ルネ・コロ(テノール)
クルト・モル(バス)
ウィーン国立歌劇場合唱団
ノルベルト・バラッチュ(合唱指揮)

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
レナード・バーンスタイン(指揮)

録音時期:1978年11月(第1番、第4番、第6番、第7番、第8番)、1978年2月(第3番、第2番)、1977年9月(第5番)、1979年9月(第9番)
録音場所:ウィーン、ムジークフェラインザール(第1-8番) 国立歌劇場(第9番)
録音方式:ステレオ(アナログ/ライヴ)