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・マスネ作曲歌劇「ウェルテル」
ドヴォルスキー(ウェルテル)
ファスベンダー(シャルロッテ)
ペシェク指揮プラハ響
(1985)
http://www.youtube.com/results?search_query=weigl++werther

パヴァロッティがドヴォルスキーを評価していたというのは助六さんの情報で始めて知った。そう言えば「愛の妙薬」のネモリーノや「蝶々婦人」のピンカートンはドヴォルスキーのレパートリーでもあるので、意外と被っているのかもしれない。81年にはスカラ座でパヴァロッティの代役でクライバーと初共演している。88年のクライバーのボエームの来日公演は当初予定されていたカレーラスの代役だった(もしカレーラスが病気で倒れていなければカレーラスとクライバーの初共演になるはずだった)。

と書くとドヴォルスキーは3大テノールの控えみたいな感じだが、でも私にとってはベルゴンツィやアラガル、(生では聞けなかったが)クラウスと共にイタリア系テノールとしては3大テノールに並ぶ思い出のテノールだ。もう全盛期はとっくに過ぎていると思うが、佐藤しのぶの相手などで近年も来日しているようなので次の機会には久しぶりに聴きに行こうと思う。

さて、ヴァイグル監督のオペラ映画はロストロポービチの録音を使ったショスタコービチのマクベス夫人をだいぶ以前に紹介したことがある。他にショルティの録音を使ったチャイコフスキーのエフゲニ・オネーギンの映画もあるが、どちらも歌手とは別の俳優が演技しているのに対して、このウェルテルでは映画用の録音を新規に行って主役のファスベンダーとドヴォルスキーの2人が自ら演技している(他の役は俳優が演技)点が大きく異なる。恐らくヴァイグル監督自身がどこかでこの2人の舞台を見て、その声と演技に何か感じるものがあったのだろう。

この映像はLD時代には国内盤も出ていたが、私は当時カレーラスとシュターデのウェルテルの録音に心酔しており、この演奏はドイツとチェコの歌手というフランスオペラにしては変わったキャストだなと思って関心を持たなかった。でもこの作品の初演はウィーンなのだから、ドイツやチェコの歌手が歌ってもおかしくはないのだ。そう思って改めてDVDを取り寄せてみたところ、思いがけず良い演奏だということを初めて知った。ファスベンダーの少々男っぽいルックスは私のシャルロッテのイメージとは異なるが歌は良い。ドヴォルスキーも歌も演技もなかなかの好演と言ってよいのではないだろうか。

ドヴォルスキーは1985年のシカゴの「エフゲニ・オネーギン」にも出演しており(共演はここでもフレーニ)、もちろんお国ものの「売られた花嫁」なども歌っている(いずれも正規の映像が残っている)。マルチリンガルな器用さという点では往年のゲッダに通ずるものがあるかもしれない。DVDはもう入手困難かもしれないがぜひ見て欲しい映像だ。