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(音声)
カテリーナ:ガリーナ・ヴィシネフスカヤ
セルゲイ:ニコライ・ゲッダ
ジノーヴィー(カテリーナの夫):ウエルナー・クレン
ボリス(カテリーナの舅):ドミトール・ペトコフ
ロストロポービッチ指揮ロンドンフィル
1978年

 

 

 


edcさん、菅野さんお勧めのヴァイグル監督の映画版を入手した。1978年のロストロポービッチ盤の音楽に合わせて1992年に作成したものだ。ヴァイグル監督は「エフゲニーオネーギン」(チャイコフスキー)や「村のロメオとジュリエット」(ディーリアス)、「ルサルカ」(ドヴォルザーク)、「ウェルテル」(マスネ)などのオペラ映画を制作している。「村のロミオとジュリエット」ではハンプソンが、「ウェルテル」ではドヴォルスキーとファスベンダーが映像にも出演していたが、この「ムツェンスク群のマクベス」で演技は全て歌手とは別の俳優が受け持っている。

エフゲニー・オネーギンもそうだったが、音源と映画の制作時期が離れている、つまり映画化を前提とした音源を用いている訳ではないという点がロージ監督やゼフィレッリ監督のオペラ映画と大きく異なる点だ。恐らくヴァイグル監督がお気に入りの音源を選んで映画化しているのではないだろうか。そもそも歌手が演技することを必ずしも前提としていないのでこのようなことが可能なのであろう。

オペラ映画は先に音楽を録音するので口パクになるが、実際に声を出しているわけではないので大きな口を開ける必要がなくなる、あるいは歌手とは別の俳優を起用したり屋外でロケすることが可能になるといった映像上のメリットがある。

このためトスカやカヴァレリア・ルスティカーナのようなヴェリズモ作品では特に独特のリアリティを持った作品が実現する。実際トスカやカヴァレリア・ルスティカーナは複数の映画が制作されている。

ムツェンスク郡のマクベス夫人もリアリズム系の作品なのでオペラ映画向きだと言えるだろう。改訂版の「カテリーナ・イズマイロワ」はすでに1966年に旧ソビエトで映画化されている。改訂版はどぎつい表現を当局の指導に従って修正している。主役を歌ったヴィシネフスカヤが自ら主演しておりこちらも熱演で見応えがある。ただし画像も音もかなり粗い。

ヴァイグル監督のこの映画は恐らくその1966年の映画以来の映像化だろう。ヌードのことは買うまで知らなかったが、ヴァイグル監督はベルリン・ドイツ・オペラのサロメの舞台でマルフィターノをヘア・ヌードにしてしまうぐらいだから映画ならこのくらいはやるだろう。

全体にどぎつい感じはなくむしろきれいな映像だと思った。カテリーナ役の女優はやや線が細い気もするがこれはヴィシネフスカヤの演技をすでに見ているせいもあるだろう。主役が猛烈な悪女だと作品のドロドロした面が強調されるが、このように可憐だとむしろ彼女の境遇に同情したくもなってくる。女中のアクシーニャが小娘でなくおばさんなのは少しがっかりもしたが、でもこうすることで下男達の欲求不満がよりリアルに表現された。

ショスタコーヴィッチはこの作品を新妻に捧げたそうだ。深すぎて私などはう~んと唸ってしまう(笑)。歌曲集ミルテの花をクララに捧げたシューマンとは相当違う感覚だ。しかし愛とは何なのかということに対する問題提起が作曲者の狙いだったとすればこの映画は大変成功している。

画質・音質は最新映像のようにはいかないが一定水準はクリアしている。今年、来年に日本でもこの作品が上演されるのを機会に国内盤の発売を期待したい。

 

 

 

 

 

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1966年のカテリーナ・イズマイロワもユーチューブにかなりアップされていた。
http://www.youtube.com/results?search_query=Katerina+Izmailova&search_type=