名ばかり管理職認定~時間外手当支払い命じる~ | 元MR・社労士がお届けする医療業界のための人事・労務News

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/東京都豊島区池袋 長友社会保険労務士事務所

名ばかり管理職とは法律上の定義はありませんが、「労働基準法第41条により労働時間に関する規制の適用が除外された管理監督者に該当しないにも関わらず、管理職として時間外手当を支払われていない者」ということになります。

 

昨今では、マクドナルドの店長が同社店長の管理監督者性を争った日本マクドナルド事件(東京地 平20.1.18)を代表例として多くの判例が出ていますが、先日も下記のような判例が出ています。

 

共同通信記事(2013.2.27)

 

▼広島修道大の元財務課長(57)が、実態がないのに管理職と扱われ、残業代を支払われなかったとして、大学を運営する学校法人修道学園に未払い賃金など約630万円の賠償を求めた訴訟の判決で、広島地裁は27日、時間外手当の支給対象外となる管理監督者には当たらないと認め約520万円の支払いを命じた。
衣斐瑞穂裁判官は「原告の上司として法人事務局長などが置かれ、業務の大部分で上司の決裁が必要であり、権限は限定的だ」と指摘。出退勤時間についての裁量が限られていたことなども考慮し「権限や責任が経営者と一体というのは困難だ」と判断した。
判決によると、男性は2008年4月~11年3月、大学の財務課長を務め、残業時間は最大で月103時間30分だった。
修道学園の住田敏専務理事は「主張が認められず大変遺憾。財務課長は経営面などで重要な職責を担っている。控訴を視野に今後の対応を検討する」との談話を出した。▼

 

なぜ、このような争いが多発するかというと、時間外手当の支払い対象外となる「企業における管理職」と労働基準法第41条で定める「管理監督者」は必ずしも同一ではないからです。

 

企業における管理職のラインは、会社によって課長以上であったり係長以上であったり様々で、役職に与えられた権限もまちまちなので、一概に役職名だけで判断できるものではありません。

 

一方で、労働基準法第41条で定める「管理監督者」は、厚生労働省の通達により、「部長、工場長等労働条件その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」と示されています(昭和63.3.14基発150号)が、この管理監督者の要件について、具体的には主に次の3つの要素などから判断されることになります。

 

①職務内容、責任と権限
 決裁や人事(採用・評価等)、勤怠などの権限をどの程度与えられているか など

 

②勤務態様
 出退勤が本人の裁量に任されているか、遅刻・早退時に賃金を控除されていない など

 

③賃金等の待遇面
 賃金が役職手当や賞与などにより一般職の水準と一定の較差がある など

 

従って、企業側が自社の管理職を名ばかり管理職とされないためにとるべき対策を、上記3要素に照らし合わせて考えると、次のようになります。

 

①管理職の責任と権限を明確にする

 

自社の管理職が担っている責任・権限を明確にします。これは組織としての業務分掌や職務権限を整理して、一覧表や規程など書面に明記することが大切です。この過程で、もしも現行の管理職の中で、十分な責任・権限を担っていない者があれば、管理職として必要な責任・権限を与えるか、管理職ではあるものの時間外手当見合いの賃金を支払うなどといった措置が必要となります。

 

②遅刻・早退時に賃金を控除しない

 

管理職であるにも関わらず、遅刻・早退時に賃金を控除していると、労働時間の裁量権が認められず、名ばかり管理職と判断されるリスクが非常に大きいと言えるでしょう。実運用面でそのような扱いをしないことはもとより、就業規則、賃金規程などにもその旨を明記しておきます。

 

③管理職と非管理職で賃金水準の逆転が生じない

 

時間外手当の支払い対象となる非管理職の賃金と、支払い対象外の管理職の賃金の逆転が、多くの社員で見られるようだと、名ばかり管理職と判断されるリスクが高まります。
これを避けるには、賃金水準を設計する際に、非管理職の上位職社員がある程度時間外労働を行っても、管理職の賃金を上回らないよう基本給水準の格差を十分にとるとか、役職手当の金額で格差をつけるといった措置が必要となります。
月例給与のみで十分な格差を設けられればよいのですが、どうしても月例給与だけでは不十分な場合は、賞与まで含めた年収水準で格差を設けます。

 

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