◆◆◆くじょう みやび日録 第二期◆◆◆
榎村寛之『謎の平安前期』を読みました。副題を確認すればわかるのですが、源氏物語誕生くらい、つまりは紫式部くらいの時代も含みます。(「平安前期」から、せいぜい道真くらいまでの時代かと思いきや)
確かに、平安時代は思ったより長いのです。
◆斎宮など女性史にウェイト
著者は、斎宮歴史博物館の有名な先生なので、やはり斎宮関係の著述が特に目立ちます。女性たちの記述にウェイトが置かれていました。
奈良時代の宮廷を支えた女官たちはどこへ? 女子教養が実学から次第に離れていく様子が、個人的には寂しい限り。しかし一方で、紫式部や清少納言などに代表される、女流文学の可能性は広がりました。
◆斎宮女御・徽子女王の魅力的な解釈
なかでも、個人的に気にしてきた人物である、村上天皇時代の「斎宮女御」徽子女王(きし/よしこ)に関する記述が印象的でした。自分と同じく伊勢斎宮に選ばれた娘に従って下向した彼女。後世の『源氏物語』六条御息所のイメージもあり、ままならない現実からの逃亡といった負の面を見てしまいがちでしたが、本書によれば……
それは隠遁でも逃避でもなく、伊勢に生きがいを見出し、再び国家の最前線に立つ旅立ちだった。[237頁]
と解釈されます。
女性の力が前向きに考えられている一冊でした。
全十章300頁弱の内容はかなり充実。難解ではないものの読むのに骨が折れました。ほかの興味深い箇所も、いずれ紹介するかもしれません。
◆澤田瞳子さんの作品
本書の生まれたきっかけは、作家・澤田瞳子さんの小説『夢も定かに』だそうです。奈良時代の女官を主人公にした歴史小説とか。
澤田さん、もちろんお名前は存じ上げているのですが、なんか読む機会がなく(意外かもしれませんね、くじょうドストライクゾーンの作家さんですしね)……ひとまず『夢も定かに』から読んでみようと思います!
ほかにお勧めのタイトルがありましたらご教示ください!!