◆◆◆くじょう みやび日録 第二期◆◆◆

 

=承前=

 

「ワルシャワの歴史地区」は世界遺産登録されていますが、理由は古い歴史的建造物があるから、などではありません。

 

第二次世界大戦の終盤、ワルシャワ市民はナチス・ドイツに蜂起、20万人もが犠牲となり、報復攻撃で街は灰燼に帰しました。

 

ここから「ポーランドフェスティバル2024」にていただいた、世界遺産の小冊子を引用します。

 

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 跡形もなく徹底的に破壊しつくされた首都を前に、ポーランドの人びとは超モダン都市としての再起の道ではなく、自分たちがはぐくんできた時間と暮らしが刻まれた戦前の姿を復元する道を選択しました。

 世界遺産に歴史地区として登録されている旧市街は、市民たちの最後の抵抗拠点だったのです。生き残った人たちは、死んでいった家族や仲間の「記憶」を胸に、ポーランド民族のシンボル的建築である王宮などを復元することに残りの人生を賭けます。

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つまり街は復元で、歴史的価値としては本来高くはありません。

では何が評価されたか?

ワルシャワ旧市街復興プロジェクトは、古い絵画や写真、残しておいた詳細なスケッチをもとに、「レンガのひび割れ一つに至るまで再現」した市民運動でした。鎮魂の祈りを捧げるように、街が再現されたのです。

 

異例中の異例ながら、人びとのおこないの尊さを評価する、世界初の世界遺産となったのです……!

 

 

この逸話を知り、感動してしまったのですよね。

建国以来ポーランドは、幾度か消滅の憂き目をみてきましたが、そのたびによみがえってきた国家。不死鳥としての姿を現代にも鮮やかに見せつけたワルシャワ復興。ポーランド人の姿勢を象徴するかのよう。

ただ再現するにとどまらず「ひび割れ一つ」までも元の通りとは……!

 

さらに「文化財修復」という仕事への、個人的なあこがれも理由にあるかもしれませんね。

 

 

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去年、ポーランドの第二次世界大戦をテーマにした大長編小説『また、桜の国で』を読みました。素晴らしかった。ショパン作曲の≪革命のエチュード≫が効果的に使われ、しばらく頭の中に響いていたほどです。

 

 

 

 

 

そう、ショパンも実は、ワルシャワの生まれ。ワルシャワには、ショパンの銅像があるのですが、小説によると、ナチス・ドイツが真っ先に破壊したのが、戦前にあったショパンの像なのだとか。ショパンは、ワルシャワっ子の心の支えだったのですね……。

 

 

≪革命のエチュード≫はこちら

聴けば誰でも「ああ~あれね!」ってなる曲です!