◆◆◆くじょう みやび日録 第二期◆◆◆
宇佐美りんさん『推し、燃ゆ』。かつて芥川賞を受賞して話題になった作品を、図書館で並んでいるのを偶然見かけて(年が経つと待たずに借りられるね)読みました。数時間で読める短めの作品です。
今回は読書感想文、または書籍紹介文ではなく、「推し」ってなんだろうと疑問に思ったのでつれづれなるままに。
◆「推し」の定義
「推し」という語の誕生
2000年代ころから使われているらしいですね。
そもそもは「(AKB48などのグループの中で)一推しのメンバー」→「推しメン」→「推し」と。
短縮系になるとおそらく広義の意味が生まれ、「推薦したい」そして「好き」な気持ちを端的に表すようになる。(対象は芸能人・著名人ばかりでなく、二次元のキャラクターや、事物でもOK)
「推し」は汎用性が高い
『推し、燃ゆ』の主人公は、かなりディープなアイドルファン。読んでいて、彼女の現実世界での生きづらさも相俟って、息苦しくなるほどに。
明らかに「好き」よりは重い表現のようですね。
しかし一方、ライトな好きでも気軽に「推し」と表現できる気がします。
例えば、学校の先輩などにも使う場合があるらしいです。
お付き合いしたいなどの「好き」よりは少し軽い感じ、または遠くから見ているだけでいい感じなのかな。
人生賭けるような深い好きから、ちょっとした好きまで、すべて「推し」のひとことで使い分けて表せるようです。
「○○オタク」は聖域!?
似たような言葉に「○○オタク」は以前から存在しましたが、似て非なるもののように思えます。「オタク」というと、対象についてよほど詳しくないといけないような……少なくとも自分にとってはハードルが高い。
自分の場合、好きな歴史上の人物について、「オタク」というのは憚られる(知識が足りない)けど「推し」というくらいなら許されるかな? と思ってしまう。あくまでも自分にとってはですが、「オタク」は聖域なんですよね。とはいえ「推し」というのもなんだか時流に乗って軽々しい感じがして好きじゃない……相変わらず難しいやつめ、自分。
◆自分の「推し」は?
好きじゃない言葉といいつつ、敢えて自分の「推し」をあげるとすれば。対象が人間(に準ずるもの?)と限定するとして、もちろん浮かび上がるのは歴史上の人物です。(普段は素直に「好き」と表現しますけど)
代表格はこの人とか。少女時代の刷り込みで生涯の「一の人」です!
(新しい言葉を作ってしまった……歴史用語にあらず)
大和和紀『天の果て地の限り』より(中臣鎌足)
赤字は加工(藤原氏推しってことで、この場合「箱推し」というのかな?)
わたしは推しに課金できない(笑)
せいぜい推しに関する書籍を買うとする。しかしそのお金は出版社や著者を潤すだけで、推しの懐には一銭も入らない(苦笑)
そう、「推し」はもう死んでいます。
彼らの人生の結末はわかっているのよね。
いまさら彼らのたどる道は変えられない(変わらない)。
後世の評価はその時々で変わるけどね。
(まあ自分が不勉強で知らないことばかりであるうえ、どんな歴史の新発見があるかわからないものの)
この小説はアイドル推しの女の子が主人公だけど、
・推しが突如事件を起こす
・推しが突如引退する
・推しが突如結婚する
など、唐突な不測の事態が起こりうる。
同時代を生きるとはそういうことか……なんということでしょう!
この小説のパワーワードは、
「推しは人になった。」(単行本版121頁)
でしたね。