◆◆◆くじょう みやび日録 第二期◆◆◆

 

前から気になっていた漫画『エマ』。高慢と偏見やジェイン・エアでイギリスづいたところで、勢いに乗って全10巻一気に読破しました。

(ちなみにオースティン作品の「エマ」とは無関係です)

 

 

 

英国ヴィクトリア朝の雰囲気が素敵

 

厳しい階級・身分社会で有名な英国。世界帝国として絶頂期のヴィクトリア朝を生きるメイド女性「エマ」が主人公の物語です。上流階級に属するウィリアムとの、身分違いの恋愛を描いています(お坊ちゃんとはいえ、紳士階級であり貴族ではないところがまた面白い)。

 

同じ身分違いの恋でも、個人的には『パレス・メイヂ』のような女性上位が好みなのですが、この作者さん(女性のようです)はとにかくメイドさんフェチらしく、メイドのエマを可愛く美しく描こうというねちっこい情熱を感じる作品です(笑) 時代へのこだわりも強く、設定の好みはさて措き、英国歴史ロマンの雰囲気がとても素敵な漫画でした。

 

 

やっぱり脇役が素敵!!

 

主人公エマは、普段は眼鏡をかけていて(恩人である最初の女主人から贈られた高級品)、メイド衣裳を隙なく身にまとい、コンパクトなまとめ髪。優秀で地味だけれど、実はものすごい美人……という設定。

 

眼鏡をはずして髪をほどくシーンとか、執拗に作者が描いていてちょっと笑えます。極度の恥ずかしがり屋なところがまた作者のツボらしい……(なんとなく、『うた恋い。』の式子さまっぽい雰囲気)

 

でもね~エマは優秀なのに、ものすごい恋愛脳なのよね~(呆)

ついでに言うと、お相手のウィリアムにも魅力を感じなくて……

エマとウィリアムが結ばれるまでには周りの犠牲もあってさ……

いまひとつ、わたしは好きになれませんでした。

 

 

 

しかし!!

脇役陣が素敵な人だらけなのですよ!!

心ゆくまで脇役を愉しめる、読み応えある作品でした……。

 

・エマが二番目に仕えた家のメイド長・アデーレ。きつい目をした黒髪のクールビューティー! 泣く子も黙る仕事一筋の冷徹なドイツ人で、とにかく優秀でカッコイイ!

 

二番目の家のご主人様も素敵でした。移住貿易商で、冷静沈着でモノクルを愛用するドイツ紳士。イギリスのガチガチな階級制に反発を抱いており、熱烈な愛妻家なのも理想的♡ 身寄りのないエマの結婚式では父親役も務めました。(上にある写真で9巻の表紙になっています。ちなみに『エマ』10巻は本編が7巻で終わりますが、すべて表紙はエマひとり←このへんも執拗さを感じる……。番外編を集めた8巻以降はエマ以外も表紙になっています、最終巻はエマとウィリアムですが)

 

・ウィリアムのすぐ下の弟アーサーも可愛かった。秀才タイプのクールな優等生。兄が天然だからなぁ……こういう、ちょっと融通は利かずとも真面目に生きている子に好感を抱いてしまいます。

 

・エマを拾ってくれた恩人である、最初の女主人ケリーも素敵。引退したガヴァネス(家庭教師)の厳格な老婦人で、あんなふうに年を取りたいとあこがれてしまいます♡

 

以上の三人はどちらかというと厳格な真面目タイプですが……

 

・奇怪なインド人王子のハキムもポイント高し! ハキムガールズを侍らせる自由奔放なイケメンで、象でウィリアムの家に乗り付けてくる初登場(アポなし)笑。インドと英国の関係は突っ込みたいところだろうが、本筋と関係ないので語られず、狂言回しの役どころ。

 

 

英国の空気が好きな人には(メイド好きの人にも!)特にお勧めできるしっかりした漫画でした。作者・森薫さんによる有名な漫画『乙嫁語り』も、近いうちに読んでみたいです。