◆◆◆くじょう みやび日録 第二期◆◆◆
 

角田光代版 現代語訳・源氏物語を読了し、すぐに積読だった今年の新刊、井上幸治『平安貴族の仕事と昇進』を読みました!

 

 

 

平安貴族のシビアな一面……

 

諸大夫階級の人々がメインに取り上げられていました。「諸大夫」とは、四位・五位(正四位上~従五位下)の人々。

 

特にここへ上がる「叙爵」への昇進を、実例をあげつつ細かく検討しているのが興味深い。叙爵されたからといって安心ではなく、官職に就けないことも珍しくない。こうした場合の身の処し方なども描かれます。

 

王朝文学や有名歴史人物などを追っていると、四位・五位は大した身分でないように感じてしまいますが、彼らも相当な高位なのです。そして、中間管理職的な激務の様子も現代ビジネスマン顔負けです。

(スマホのない時代のやりとり、特に大変そう!!)

 

 

 

 

 

「頭中将」について深掘り!

 

上記書籍の著者も6名の論者に名を連ねる『光源氏に迫る』。

宇治市源氏物語ミュージアムでの講義録です。

 

こちらでの井上氏の講義は、「頭中将の実像―『源氏物語』に描かれない平安貴族―」ということで、上の書籍にも登場した、政界の若きエリート「頭中将」について深掘りしています。

 

一条朝の歴代頭中将の表もあります!(わが藤原公任も!)

同じ蔵人頭でも弁官の「頭弁」は例えば藤原行成が有名なように、天皇の政務に携わることが多い。近衛中将を兼ねる頭中将は、天皇の随従としての働きが大きかったようで、住み分けができていたようです。

 

源氏物語の頭中将といえば、光源氏のライバル(実は引き立て役)のイケメンですよね。多忙な地位ですが、彼は光源氏に会いに須磨まで行く暇なんてあったのかい?! という種明かしが最後に載っています。

 

ところで、源氏物語の頭中将は、政界の重鎮である左大臣の長男。将来を嘱望された地位ですから、史実には同じパターンも珍しくなかったそう。実は……公任も同様の一人に数えられます! 公任、もしや頭中将のモデルって自分では……とか思ったかもね……?←光源氏じゃなくて引き立て役の頭中将ってのがミソ、わたしは好きだけどね

 

(ちなみに公任サマの頭中将期間は989~992年、例の古典の日エピソードから1008年には源氏物語の若紫巻が存在していたことが判明しているので、ありえない話ではない、笑)

 

 

 

 

書籍にはほかに、冒頭の山本淳子さんなど、面白くて講義録なので読みやすい論が並んでいますので、光源氏や源氏物語に興味のある方はぜひ。