第7回

真夏の夜の怪談


不思議大好き“魔法半将軍”細川政元は、その邸も怪しかった


長享2年(1488)の夏のこと。政元サマ御年23歳のころです。

細川邸に、怪しい噂が出ておりました。


  細川殿私第南庭水上浮者有之。見之則人之頚也。其色白。近之則不見。遠之則忽見。実妖怪也。

   [『蔭涼軒日録』長享二年七月七日条]


細川氏の邸にある池に、なにかが浮かんでいる。見るとそれは人の白い首であった。ところがその首は近づくと見えず、遠くからだと見えるのだった。まことにもって不思議なことである。


史料は以下のように続きます。


  可系家之安危乎云々。又云近来風狂之相有之云々。孰不吉兆也。


細川家の安危にかかわるものであろうか、などと噂された。また、最近世に風狂の相あり、なにか不吉の前兆ではないか、とも囁かれている。


しかし、政元にはこの後とりたてて何事もなく、むしろ不吉の前兆といえば、翌年将軍・義尚が若くして歿した(25歳)ことのほうが当てはまるかもしれませんね。


同じ長享2年、ほかの史料にも細川邸の怪異は現れています。

  細川右京大夫宅有種々怪云々

   [『親長卿記』七月十四日条]

  細川屋形ニ凶共在之云々

   [『大乗院寺社雑事記』八月十五日条]


さすが細川政元様、邸にこんなモノがあらわれても、平然としていらっしゃいます……。