NHKラジオ講座「漢詩をよむ」第16回です。


4回にわたる菅原道真の最終回です。テーマは<大宰府謫居>。


昌泰4年(901)、菅原道真は大宰権帥に左遷されます。いわゆる“昌泰の変”ですね。

2年ほど配所で暮らし、その地で没しました。この間の詩をまとめた詩集が『菅家後集』です。死期が近づいた道真が、友である都の紀長谷雄に送り託したといい、46首が収められています。


今回は、ここからの詩になります。


「慰少男女詩」五言古詩。男女というのは、配所に連れて行くことを許された、道真のまだ幼い子どもたちを指しています。子どもたちに話しかける形をとりつつ、自らの境遇を「まだましだ、まだましだ」と自分に言い聞かせているような詩です。


「読家書」七言律詩。都の我が家からの手紙を読んで懊悩するさまを詠んでいます。残された奥さんと娘たちが、薬用に生姜など送ってきて健気です。


「問秋月」「代月答」七言絶句の2編で、道真が月に問いかけて月が答えるという形です。<讃岐守時代>の「問藺笥翁」「代翁答之」七言絶句と同じパターン。西へ行く月に自分を重ね合わせています。最終的に、「唯是西行不左遷」<ただ西へ行っているだけで、左遷ではないのだ>という結論(?心の叫び)に達しています。